こおりのほしのねむりひめ(ほのぼのばーじょん)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
86 / 88

再構築

しおりを挟む
発見されたものは、バディだけではなかった。ひょっとするとバディ以上の発見とも言えるかもしれない物が発見されたのだ。

それは、惑星御津志筑みつしづきの衛星軌道上に設置された大規模発電衛星からの送電を受信する為の設備だった。一部故障していた為にそのままでは使えなかったが、地下都市に残された資材を流用することで稼働できた。発電衛星は、御津志筑みつしづきを襲った災禍から三千五百年が過ぎても稼働を続けていたのだが、その存在もそれを利用する技術も失伝していたのである。

と言うか、折守市の地熱発電所は万が一の時の為のバックアップとして本来は建設されたものだったのだが、その事実が伝わっていなかったらしい。当時の混乱ぶりが窺い知れるというものだろう。

なお、発電衛星から得られる電力は、折守市の地熱発電所の実に二十倍に相当するものだった。これにより折守市の電力事情は劇的に改善。ほぼ使い放題と言えるまでになった。

豊富な電力は折守市の技術力向上に貢献。それに伴って生活インフラの再構築も行われ、ひめが発見されてからも地球の二十世紀半ばごろ相当だった生活レベルは二十世紀終盤ごろ相当にまで引き上げられた。

それでも、長年染みついた生活習慣は急激には変わらず、折守市の住人達の生活は相変わらず質素で堅実なものだったという。

十三体のバディ達はひめと連携して折守おりかみ市のライフライン維持の為に働くことになり、発見された地下都市も改めて整備され、そこに残された施設を利用した、市の発展に資する研究開発を行う基地となった。

それを発見したばかりの頃、折守おりかみ市全体が大騒ぎになり、浅葱あさぎが言ったことがある。

「こんな大変なことになってしまって良かったんだろうか」

戸惑う彼女にひめはあくまで優しかった。

浅葱あさぎ様が戸惑うのも無理はないと思います。ですがこれは必要なことだったのです。この世界の人達が無事にこれからも幸せに生きて行くためには。

浅葱あさぎ様。どうぞ胸を張ってください。浅葱様は立派なことを成し遂げたのです」

「そうか。それでいいんだな」

そんな風に言った浅葱は、すっかり大人の女性になった今も砕氷さいひを続けている。 

だけど来月からは砕氷さいひとしての仕事も休みとなる予定だ。結婚し子供を生す準備に入るからだ。

このように、生活習慣や考え方に大きな変化はやはりなかったのだった。

しかしそれもいずれは変化していくかもしれない。折守おりかみ市は現在、人口が横這いから微増に転じたのである。

となればまた状況も変化していくのだから。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...