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自分と対等な存在

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『これからもよろしくお願いします』

ひめが、言葉にはしなかったもののそう考えたのは、改めて浅葱あさぎを<主人>として認めたからかもしれない。

もちろん、千治せんじの家で浅葱あさぎがオーナー宣告をした時にそれを認めてはいたけれど、手続き上のそれではなくて、人間で言えば<心>にあたる部分でそれを認めたとでも言うべきか。

ロボットであるバディには人間のような<心>はないものの、<好ましいもの>と<そうでないもの>を認識することはできる。そしてひめは、人間の道具として作り出された自分をきちんと道具として使いこなしてくれることを<好ましい>と考えていた。

人間はついつい、自分に似た姿をしたもの、愛らしいものに対して自らの感性や価値観を投影してしまいがちだが、それが常に正しいこととは限らない。動物を人間のように扱ったりするのが良い例だろう。動物の考えていること感じていることを人間のそれに置き換えて勝手に斟酌してしまう傾向にある。

しかし、それが正しいとは限らない。動物の<気持ち>を正しく理解してるとは限らない。人間の感性や価値観を押し付けられることを動物が望んでいるとは限らないのだ。

そしてそれは、ロボットにも当てはまる。特にバディの場合は、非常に人間に似せて作られていることから人間にとっては共感しやすいのだろうけれど、機械の体を持ち、疲労も苦痛も感じないバディが人間と同じことを感じる筈がないという事実を、人間は見落としがちになる。

バディを<大切にする>ことと<人間のように扱う>ことは必ずしもイコールではない。

『人間の仲間バディとして作り出された』というのは、『人間として生み出された』という意味ではない。

同じ人間でありながら<使う者>と<使われる者>とに分けられた奴隷制度とは根本的に違うのだ。

そもそも、人間に良く似た機械とそうでない機械とで扱いを変えるというのもおかしな話ではないのか? まったく同じ部品を同じようにして組み上げられていながらも一方は愛らしい少女の姿をしていれば労わり、そうでなければ雑に扱うというのは、ダブルスタンダードというものではないのか?

もし、バディに本当に心があるとしても、自分と違っている者は認めようとせず、差別を区別と言い換えるような詭弁を弄して自らを正当化しようとする人間が、ロボットを本当に<自分と対等な存在>として扱うことができるのか?

現実問題としてそんなことは無理というものではないだろうか。

だからバディに心は与えられていない。

いつか、人間が自分とは異なる存在であっても常に対等に接することができるようになったとしたら、バディに心を与えても幸せになることができるのかもしれないけれど。

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