48 / 88
結婚式
しおりを挟む
ひめはロボットなので、<心>を持たない。だから本来は『嬉しい』と感じることはないのだが、こういう時は敢えてそう表現する方が人間には伝わりやすいということを知っており、だからあくまで<人間の好ましい気遣いに対する謝意を現す表現>として、『嬉しい』という言葉を使ったのだった。
故にこれは、ギリギリ<嘘>には当たらないと彼女のAIは判断する。
ここまで来ると<詭弁>の一種なのだが、やはり人間とうまく折り合う為にはそういうこともできないとダメなのだろう。
まあそれはさて置いて、子供達との交流は、ひめにとっても好ましいものであったのは事実のようである。
更にひめは、清見村の住人による結婚式にも参列した。
<結婚式>と言っても、おそらく多くのイメージするようなものとはかなり違っていると思われる。
と言うのも、いわゆる結婚式場で行うのではなく、それぞれの家で、本当に身近な人間だけを集めて(せいぜい十人程度)、その前で結婚することを宣言するという形なのだ。格好も、いわゆる一張羅的なハレの日用のものを身に付けるものの、結婚式以外では着ないような服装ではなかった。
過酷な環境下で無理なく続けるためにはそうするしかなかったのだろう。『過酷だからこそこういう時には盛大に』という考えすら通用しないほどに厳しい環境であった。
それでも人間は生きている。
生きて、次の世代に命を繋いでいる。
しかも、何度か参列してみて、ひめは悟っていた。
『ここの人達は、結婚して子供を残すことにすごく強い義務感を抱いてますね』
まあそれも無理もないのかもしれない。なにしろ平均寿命四十八歳。僅か七万人しか残っていないのだから、子供が次々生まれてくれないとあっという間に滅びてしまう。少子化がどうこう言う暇さえない状態なのだから。
少子化対策をしているうちに、現時点での文明を維持するのに必要な数を割り込んでしまう。
正直な話をするなら、そこまで切羽詰まった世界でもあった。
だからとにかく結婚して子供を作ってというのが完全に義務として常識化しているらしい。
恋愛を楽しむとか、そういうのですらなさそうだった。
けれど、かと言って不幸せそうでもない。今、ひめの前にいる花婿も花嫁も、満たされた表情をしていた。自分が選んだ相手に対して責任を負う覚悟があるからだった。
「それにだいたい、子供が大きくなったらまた別の相手を探すのも普通だ」
と、浅葱が説明してくれた。
そしてこの場合の『子供が大きくなったら』は、十二~十三歳を指していたのだった。
故にこれは、ギリギリ<嘘>には当たらないと彼女のAIは判断する。
ここまで来ると<詭弁>の一種なのだが、やはり人間とうまく折り合う為にはそういうこともできないとダメなのだろう。
まあそれはさて置いて、子供達との交流は、ひめにとっても好ましいものであったのは事実のようである。
更にひめは、清見村の住人による結婚式にも参列した。
<結婚式>と言っても、おそらく多くのイメージするようなものとはかなり違っていると思われる。
と言うのも、いわゆる結婚式場で行うのではなく、それぞれの家で、本当に身近な人間だけを集めて(せいぜい十人程度)、その前で結婚することを宣言するという形なのだ。格好も、いわゆる一張羅的なハレの日用のものを身に付けるものの、結婚式以外では着ないような服装ではなかった。
過酷な環境下で無理なく続けるためにはそうするしかなかったのだろう。『過酷だからこそこういう時には盛大に』という考えすら通用しないほどに厳しい環境であった。
それでも人間は生きている。
生きて、次の世代に命を繋いでいる。
しかも、何度か参列してみて、ひめは悟っていた。
『ここの人達は、結婚して子供を残すことにすごく強い義務感を抱いてますね』
まあそれも無理もないのかもしれない。なにしろ平均寿命四十八歳。僅か七万人しか残っていないのだから、子供が次々生まれてくれないとあっという間に滅びてしまう。少子化がどうこう言う暇さえない状態なのだから。
少子化対策をしているうちに、現時点での文明を維持するのに必要な数を割り込んでしまう。
正直な話をするなら、そこまで切羽詰まった世界でもあった。
だからとにかく結婚して子供を作ってというのが完全に義務として常識化しているらしい。
恋愛を楽しむとか、そういうのですらなさそうだった。
けれど、かと言って不幸せそうでもない。今、ひめの前にいる花婿も花嫁も、満たされた表情をしていた。自分が選んだ相手に対して責任を負う覚悟があるからだった。
「それにだいたい、子供が大きくなったらまた別の相手を探すのも普通だ」
と、浅葱が説明してくれた。
そしてこの場合の『子供が大きくなったら』は、十二~十三歳を指していたのだった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜
蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。
魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。
それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。
当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。
八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む!
地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕!
Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!
鋼殻牙龍ドラグリヲ
南蛮蜥蜴
ファンタジー
歪なる怪物「害獣」の侵攻によって緩やかに滅びゆく世界にて、「アーマメントビースト」と呼ばれる兵器を操り、相棒のアンドロイド「カルマ」と共に戦いに明け暮れる主人公「真継雪兎」
ある日、彼はとある任務中に害獣に寄生され、身体を根本から造り替えられてしまう。 乗っ取られる危険を意識しつつも生きることを選んだ雪兎だったが、それが苦難の道のりの始まりだった。
次々と出現する凶悪な害獣達相手に、無双の機械龍「ドラグリヲ」が咆哮と共に牙を剥く。
延々と繰り返される殺戮と喪失の果てに、勇敢で臆病な青年を待ち受けるのは絶対的な破滅か、それともささやかな希望か。
※小説になろう、カクヨム、ノベプラでも掲載中です。
※挿絵は雨川真優(アメカワマユ)様@zgmf_x11dより頂きました。利用許可済です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる