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接し方

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ひめは今、氷窟を掘り遺跡の発掘を目指す砕氷さいひとしても働いている。

以前、彼女が氷窟の壁を叩いてその振動で地中の構造を大まかに把握した際に発見した、<人工物による空間>を目指して掘り進んだ氷窟は既に十メートルに達していた。残りは約二十メートル。一日一メートルほどのペースで掘り進んでいるので、あと二十日くらいでその<人工物による空間>がどのようなものか判明するだろう。

『何か、浅葱あさぎ様の役に立つものが見付かればいいんだけどな』

ひめはただそんなことを考えていた。

「そろそろ終わるぞ」

浅葱あさぎに声を掛けられて、

「はい」

と応える。

残土を袋に詰めてそれを担ぎ、浅葱あさぎの前を歩いてやぐらへと戻っていく。万が一、足を滑らせるなどしても浅葱あさぎを巻き込んだりしない為だ。

また、仕事帰りなどだと普通は緊張が解けて話をしながら帰ったりするものかもしれないが、砕氷さいひ達は少なくとも櫓を降りるまでは緊張を解くことがないので、そこまでは必要最小限しか口をきいたりもしない。

『ここの人達は本当に真面目だなあ』

かなり自分に対して打ち解けてきてくれたようにも思えるのにそれなので、ひめは改めて感心していた。

もっとも、下手にふざけて興奮してうっかり思い切り空気を吸い込んだりしたら命にも係わるような環境だから無理もないというのは間違いなくある。

櫓まで戻って、残土をダストシュートのようなところから下に落とし、自分達も下まで降りる。もう何度も繰り返したことだけど『大変だ』とも思ってしまう。ひめはロボットだから苦痛は感じないが、人間にとっては大きな負担だというのは理解している。

櫓の下にある控室で仕事用の防寒着から普段着に着替え、ようやく浅葱あさぎの緊張が解けるのをひめは感じ取った。

「お疲れ様でした」

にこやかな表情でねぎらってくれる彼女に、浅葱あさぎはやっぱり「ああ」と呟くように返すだけで、いかにも素っ気なく見える。

でも、本当はそうじゃないことをひめはすでに理解していた。

『不器用なんですね』

口には出さないがにっこりと嬉しそうに彼女は笑った。

こんな調子だから家までの帰路でも話は弾まない。そしてひめの方も、浅葱あさぎ達ここの住人のことがかなり理解できてきて、話し方が安定してきていた。

それまでは、フランクに接するべきか一歩引いた感じで丁寧に接するべきかを探っていたのが、『やや丁寧よりに接する』という結論に至ったのだった。

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