こおりのほしのねむりひめ(ほのぼのばーじょん)

京衛武百十

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地熱発電所

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『彼らに助力してやってほしい』

市長の舞華まいかにそう言われて仁左じんざらと共に地熱発電所へとやってきたひめは、その施設の老朽化ぶりにまず一言、

「うわ~、ボロ~…!」

としみじみ口にした。

いささか失礼とも言えるが、彼女の感想は実は正しい。なにしろそこで働いている者達のほぼ全員が同じことを思っていたのだから。

ひめの言葉に、仁左じんざも苦笑いを浮かべるだけだ。

この地熱発電所が作られた時点での耐用年数は精々二百年。もっとしっかりしたものを作ろうと思えば作れなくもなかったものの、当時はとにかく当面の電力を確保する為に仮の発電施設として建造した為にそれで十分と考えられたのだ。

しかし、その後も技術の失伝は続き、正式な発電所を作る為の計画もままならないうちに結局は頓挫したのだった。

バディ自体は決して技術的な専門職を担わせる為に作られるものではないが、ひめが作られた当時でもこのタイプの地熱発電所は非常に簡便なものという認識であり、実際には放射線を電気に変換し電力を得る方式が主流だった。イメージ的に言えば、太陽光発電の太陽光の代わりに放射線を当ててという感じだろうか。これなら、非常に強い放射線が常に存在する宇宙空間であれば恒星が近くになくても発電できるので、発電効率そのものは太陽光発電に若干劣るものの実用性が評価され、宇宙に設置された大規模太陽光発電と並んで主力として運用されていた。

だがその発電パネルの製造には高い技術レベルが必要であり、かつ高度な設備を要することから惑星<御津志筑みつしづき>では早い段階で廃れてしまった。ひめにすればその辺りの技術水準が基本なので、この方式の地熱発電所だと、水車で発電機を回して発電してる程度の認識かもしれない。特別な知識でも何でもなかったのだった。

「とにかく見せてもらいますね」

あまりの老朽化ぶりについ失礼なことを言ってしまったひめだったが、目的は忘れてなかった。さっそく施設内に入っていって、状況を確認する。

三基ある発電機の内の一基は制御装置の不調が問題だったが、それも自己メンテナンスの為に自身の構造を理解しているひめにとっては玩具に等しい程度のものでしかない。

蓋が開かれた制御盤を覗き込み、ほぼ一目でその構造と機能を理解して、まるで編み物でもするかのように、

「こう、こう、こう」

などと言いながらたちどころに問題のある個所を突き止め、その場で修理してしまったのだった。

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