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あさぎPX-33
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『はい、私は皆様方人間の相方たるロボットです』
<バディと思しきもの>が発した言葉に、その場にいた全員に緊張が奔った。
「やはり…か……?」
千治が重苦しく呟く。
無理もない。目の前のこれがバディということになれば、世界すらひっくり返しかねないというのだから。
しかし……
「世界すらひっくり返すかもしれない割には、ずいぶんと気の抜けた話し方をする奴だな」
重蔵が渋い顔で呟く。話に聞いて想像していた感じとはずいぶんと印象が違いすぎて、戸惑ってしまったのだ。
「確かに。とは言え、以前見付かったものは何しろ壊れていたし、資料にあったものはもう少し落ち着いた話し方だったが、それとは別なんだろう」
千治のその言葉に、
「やはりバディなのか…?」
美園が声を喉に絡ませつつそう尋ねてきた。
「恐らく、九分九厘間違いない」
千治がそう応えると、美園の体が小刻みに震えていた。あまりの事実に勝手に震えてしまうらしい。
「村長…!」
秘書の二人が心配そうに触れてくる。
「ああ…大丈夫…大丈夫よ……」
だがこの時、それがバディであるという以上に、浅葱は別のことに驚いていた。
『こいつも<あさぎ>なんだ』
そう、自分と同じ名前だということに驚いていたのである。
しかしその日はもう、それ以上分かることはなかった。バッテリー残量が心許ないこともあり、やはりきちんと充電した上でないと話が進まないようだ。
美園は、
「市長に報告しないと…!」
と、秘書二人を連れて千治の家を出て行った。
「今日のところはこれ以上できることはなさそうだ」
千治に言われて、浅葱も、重蔵と共に家に帰る。圭児、遥座、開螺の三人も、あまりのことに興奮してしまって、
「このまま家に帰っても寝られん」
と、重蔵の家に集まることとなった。
その間も、浅葱は、バディが自分と同じ名だったことに、くすぐったいような何とも言えない落ち着かない気分だった。だから彼女としては、
『<ねむりひめ>って呼ぼう』
と、心の中であのバディのことを心の中で<ねむりひめ>と称することにした。そうでないと何だかざわざわしてしまうのだ。
そして重蔵の家に集まり、そのまま皆で酒を酌み交わすことになった。
浅葱は十三歳だが、この世界ではもう立派に成人の仲間入りをしたと見做されて、誰憚ることなく酒を飲むことが許されていた。と言うより、飲酒に関する法律そのものが既に失われているので、何才だろうと、飲める者は飲んでよかったのである。
そればかりは、従来の社会規範のようなものが意味を失くしたが故のことなので、誰も責めることができないだろう。
<バディと思しきもの>が発した言葉に、その場にいた全員に緊張が奔った。
「やはり…か……?」
千治が重苦しく呟く。
無理もない。目の前のこれがバディということになれば、世界すらひっくり返しかねないというのだから。
しかし……
「世界すらひっくり返すかもしれない割には、ずいぶんと気の抜けた話し方をする奴だな」
重蔵が渋い顔で呟く。話に聞いて想像していた感じとはずいぶんと印象が違いすぎて、戸惑ってしまったのだ。
「確かに。とは言え、以前見付かったものは何しろ壊れていたし、資料にあったものはもう少し落ち着いた話し方だったが、それとは別なんだろう」
千治のその言葉に、
「やはりバディなのか…?」
美園が声を喉に絡ませつつそう尋ねてきた。
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「村長…!」
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「ああ…大丈夫…大丈夫よ……」
だがこの時、それがバディであるという以上に、浅葱は別のことに驚いていた。
『こいつも<あさぎ>なんだ』
そう、自分と同じ名前だということに驚いていたのである。
しかしその日はもう、それ以上分かることはなかった。バッテリー残量が心許ないこともあり、やはりきちんと充電した上でないと話が進まないようだ。
美園は、
「市長に報告しないと…!」
と、秘書二人を連れて千治の家を出て行った。
「今日のところはこれ以上できることはなさそうだ」
千治に言われて、浅葱も、重蔵と共に家に帰る。圭児、遥座、開螺の三人も、あまりのことに興奮してしまって、
「このまま家に帰っても寝られん」
と、重蔵の家に集まることとなった。
その間も、浅葱は、バディが自分と同じ名だったことに、くすぐったいような何とも言えない落ち着かない気分だった。だから彼女としては、
『<ねむりひめ>って呼ぼう』
と、心の中であのバディのことを心の中で<ねむりひめ>と称することにした。そうでないと何だかざわざわしてしまうのだ。
そして重蔵の家に集まり、そのまま皆で酒を酌み交わすことになった。
浅葱は十三歳だが、この世界ではもう立派に成人の仲間入りをしたと見做されて、誰憚ることなく酒を飲むことが許されていた。と言うより、飲酒に関する法律そのものが既に失われているので、何才だろうと、飲める者は飲んでよかったのである。
そればかりは、従来の社会規範のようなものが意味を失くしたが故のことなので、誰も責めることができないだろう。
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