82 / 93
衝動
しおりを挟む
僕が吉佐倉さん達の下を離れた理由。
それは、自分の中に湧き上がった<衝動>だった。
彼女達が風呂に入ることを想像した瞬間、ぶわっと口の中に涎が湧きだしたんだ。
『美味そう……!』
確かに僕はそう思ってしまった。女性が風呂に入るのを想像して性的に興奮するんじゃなく、『美味そう』と。
まるで人間が、上等な肉や新鮮な魚の映像を見てそう思うかのように。
だから彼女達の姿が見えないようにその場を離れたんだ。
これまでは、彼女達を怯えさせないようにという配慮のつもりだった。なのに今回のは違っていた。自分を抑えるためだ。
そして改めて実感する。
『……もう時間がない……』
遠からず僕は、その欲求を抑え切れなくなる。彼女らの首筋に食らいついて息の根を止め、腹を食い破ってそこに頭を突っ込んであたたかく真っ赤に噴きだす血をすすりながら内臓をぐちゃぐちゃと貪りたいと思ってしまっている。そんな自分の姿が具体的に想像できる。そして味までも。
死体じゃなく、生きた人間のあたたかい血と肉。
『たまらない……!』
どうやら彼女達が生きられる設備を整える時間すらないようだ。
もっとも、今でも十分、<避難生活>としては快適だっただろうけどね。
僕がこれまで用意したもの。
発電機のガソリン、携行缶に入ったものが十個。たぶん一ヶ月は余裕でもちそうなほどのレトルト食品や缶詰。ミネラルウォーターのペットボトルは一トンを軽く超えている。それらを保管する為の小屋も新たに作った。
しかも食料は、周囲のスーパーやコンビニ跡を回ればレトルト食品や缶詰の類はまだまだ残っているだろう。
水も、ミネラルウォーターが大量に残されていた。
この辺りは、生き残った人間が少なかったことがむしろ幸いしているだろうな。何しろ、この公園の周囲、半径十キロ以内で現時点でも生存している人間の数は、彼女達を含めてもわずか数十人。確か数万人の人間が普通の暮らしをしていた街でこれだ。
つまり、数万人の人間が普通に生活を営めるだけの物資がここにはあったということ。その多くが衝撃波による大破壊の中で失われていたとしても、生鮮食品の類はダメになっていたとしても、僅か数十人の人間が当面の間を生き延びるには十分な物資が残されている筈なんだ。
この公園の周りには、徒歩十五分圏内でさえ、十数軒のコンビニがあり、三軒の中堅スーパーがあり、一軒の大型スーパーがあり、七軒のドラッグストアがあり、二軒のホームセンターがあった。そして、その徒歩十五分圏内には、彼女達以外の生存者は一人もいなかったのだった。
それは、自分の中に湧き上がった<衝動>だった。
彼女達が風呂に入ることを想像した瞬間、ぶわっと口の中に涎が湧きだしたんだ。
『美味そう……!』
確かに僕はそう思ってしまった。女性が風呂に入るのを想像して性的に興奮するんじゃなく、『美味そう』と。
まるで人間が、上等な肉や新鮮な魚の映像を見てそう思うかのように。
だから彼女達の姿が見えないようにその場を離れたんだ。
これまでは、彼女達を怯えさせないようにという配慮のつもりだった。なのに今回のは違っていた。自分を抑えるためだ。
そして改めて実感する。
『……もう時間がない……』
遠からず僕は、その欲求を抑え切れなくなる。彼女らの首筋に食らいついて息の根を止め、腹を食い破ってそこに頭を突っ込んであたたかく真っ赤に噴きだす血をすすりながら内臓をぐちゃぐちゃと貪りたいと思ってしまっている。そんな自分の姿が具体的に想像できる。そして味までも。
死体じゃなく、生きた人間のあたたかい血と肉。
『たまらない……!』
どうやら彼女達が生きられる設備を整える時間すらないようだ。
もっとも、今でも十分、<避難生活>としては快適だっただろうけどね。
僕がこれまで用意したもの。
発電機のガソリン、携行缶に入ったものが十個。たぶん一ヶ月は余裕でもちそうなほどのレトルト食品や缶詰。ミネラルウォーターのペットボトルは一トンを軽く超えている。それらを保管する為の小屋も新たに作った。
しかも食料は、周囲のスーパーやコンビニ跡を回ればレトルト食品や缶詰の類はまだまだ残っているだろう。
水も、ミネラルウォーターが大量に残されていた。
この辺りは、生き残った人間が少なかったことがむしろ幸いしているだろうな。何しろ、この公園の周囲、半径十キロ以内で現時点でも生存している人間の数は、彼女達を含めてもわずか数十人。確か数万人の人間が普通の暮らしをしていた街でこれだ。
つまり、数万人の人間が普通に生活を営めるだけの物資がここにはあったということ。その多くが衝撃波による大破壊の中で失われていたとしても、生鮮食品の類はダメになっていたとしても、僅か数十人の人間が当面の間を生き延びるには十分な物資が残されている筈なんだ。
この公園の周りには、徒歩十五分圏内でさえ、十数軒のコンビニがあり、三軒の中堅スーパーがあり、一軒の大型スーパーがあり、七軒のドラッグストアがあり、二軒のホームセンターがあった。そして、その徒歩十五分圏内には、彼女達以外の生存者は一人もいなかったのだった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる