200万秒の救世主

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
70 / 93

避難小屋

しおりを挟む
動こうとしないアリーネさんのためにも、僕は今度は樹脂製の波板を見付けてきてパラソルに立てかけるようにして簡易の<屋根>を作った。

そうして四人が雨宿りをしている間に、フォークリフトなどで荷物を運ぶ時に使われる<パレット>と呼ばれる、厚さ十数センチ、一辺一メートル強の樹脂製の板を九枚集めてきて敷き詰める。

さらに、パイプがグシャグシャにひしゃげた、体育祭などでよく日除けとして使われるタイプのテントを見付けてきて、ひしゃげたパイプを触角と言うか触手と言うかを使って矯正し、かなり歪ではあるけど辛うじて元の形に近付けて敷き詰めたパレットの上に設置、それを基にして、やはり樹脂製の波板などを見付けてきては次々と針金などを使って取り付けて、いわゆる<掘っ立て小屋>のようなものを僅か一時間ほどで作ってみせた。

<仮設の避難小屋>ということでね。

『取り敢えずこの中に』

避難小屋を作る材料を集めている間に見付けたスケッチブックとサインペンで筆談する。

そんな僕に対する吉佐倉よざくらさんの不信感は決して消えることはなかったけど、それでもこのままボロボロのパラソルで雨宿りするのはみほちゃんやシェリーちゃん、エレーンさんが可哀想だと思ってくれたんだろうな。怪訝そうにはしながらもそちらに移ってくれた。しかも、

「アリーネさんも、いつまでもそうしてないで…!」

やや叱咤するような口調で、吉佐倉さんは濡れた地面に横たわっていた彼女に声を掛けた。

するとアリーネさんも、のろのろと体を起こして移動する。

だけどその目には、かつてあれほど強そうだった彼女の印象はまるで残されていなかった。意志を持たないロボットみたいに、ただ言われたことに反応するだけって感じで。

「……」

僕は、そうして避難小屋へと移った吉佐倉さん達を見詰めるしかできなかった。

雨に打たれたままで……

もっとも、今の僕にとってはそんなもの、暑気除けのミストほどにも影響はなかったけれど。

吉佐倉さん達が避難小屋に入ったことを見届けた後、僕はさらに作業を続けた。

もう一つ同じようにして小屋を作ると、今度はその中に、見る影もなく破壊された住宅の中から引っ張り出してきた浴槽を設置、破れた水道管から流れ出ていた水をポリタンクに入れて運んで、浴槽を満たした。

その上で今度は、自分の<前足>を綺麗な水で洗って浴槽に突っ込む。自分に何ができるのか、体を動かしてるうちにどんどん分かってきたんだ。

と、僕の前足の辺りが一瞬でボコボコと泡立ち、ただの水だったものがみるみる湯気を上げ始める。

僕は、自分自身を<湯沸かし器>として利用したんだ。

今の僕の体は、こんなこともできてしまうんだな。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...