200万秒の救世主

京衛武百十

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幽霊

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僕はこうして死んでしまったけど、でも本当に大変なのはこれからだった。

だって、二百万倍に加速された自分達が動き回ったことで起こる途方もない大惨事を目の当たりにすることになるのは、残された吉佐倉よざくらさん達なんだから。

「ごめん。僕だけ先に楽になって……」

そうだ。僕が大人として責任を取らなきゃいけないのは本来ならここから先だったんだ。それなのに僕はこうして一人、楽になってしまった。

……って、

え? どうして僕はこんなことを考えてられるんだ…? 死んだんじゃないのか?

そうだ。僕は確かに死んだ筈なのに、なぜかこうして考え事をしながら吉佐倉《よざくら》さん達のことを見てる。

「まさか……これが<幽霊>ってことなのか? 僕は幽霊になったのか……?」

理解できない状況に呆然としてる僕に、

「まあ確かに、それがお前達人間の言う<幽霊>とかだとすれば、そうなんだろうな」

と声が掛けられた。

この声は、まさか……!?

「その『まさか』だよ。しばらくぶりだな。人間」

クォ=ヨ=ムイだった。クォ=ヨ=ムイが僕の後ろに立っていた。

「……僕を迎えに来たってことですか……?」

もしかしてそういうことなのかと思って問い掛けた僕を嘲笑うかのようにクォ=ヨ=ムイは唇を歪ませた。

「思い上がるなよ、人間。貴様にそんな価値がある訳がなかろう。貴様は私にとってただの暇潰しの道具に過ぎん」

その言葉に、僕は思っていたことを口にせずにいられなかった。

「暇潰し……暇潰しであんな怪物を送り込んでそれを僕達に始末させたんですか……?」

そうだ。考えてみたら最初から出来過ぎてたんだ。あんな怪物が都合よく現れてそれを退治して世界を救う為に僕が選ばれるなんて。全部仕組まれてたって考える方が自然だと思う。

だけど、そんな僕の指摘を、クォ=ヨ=ムイは「くかか…!」と嘲笑う。

「私が奴を送り込んだとか思っているのなら、それはとんだ見当違いというものだ。奴がこの地球に現れたのは本当にただの偶然に過ぎん。

……いや、完全な偶然という訳でもないか。私がいるからこそ奴も引き寄せられたのだろうからな。しかし、私が仕組んだというのは貴様の見込み違いだとだけは言っておいてやる」

「今さらそれを信じろと……?」

「貴様が信じようと信じまいと事実は変わらん。

まあそれは別に構わんが、お前が今、どういう状態か教えておいてやる。お前は今、<量子情報体>という存在だ」

「量子情報体…?」

「ああ、量子テレポートによって情報としてこの世界に刻まれた、いわばお前のコピーだな。これは別にオカルトでもなんでもなく、必ず生じてることだ」

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