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埋もれ火
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「なんだかんだと偉そうなことを言ってたわりには、結局、自分の言ってたことを全部撤回したんデスね。 やっぱり私の方が正しかったという訳デスね」
怪物達を始末し終えて元の公園に戻ってた僕達の前にアリーネさんが現れて、冷めた視線を向けながら嘲るようにそう言った。
だけどそんな皮肉も、もう僕には刺さらない。
だって、自分に残された時間が既に本当に残り少ないことを悟ってしまったから。そして、アリーネさんに言われたことなんかより、クォ=ヨ=ムイに騙されていた自分の愚かさの方がよっぽど苦痛だったから。
そして、言ったんだ。
「……ありがとう…アリーネさん……」
そう言った僕に、彼女は「ハッ…!」と鼻を鳴らしながら顔を背けた。その表情に、一瞬、苦しげなものがよぎったのが分かってしまった。あんな風に言いながらも、彼女なりに僕のことを気遣おうとしてくれてたのは、分かってたんだ。本当は、あれこれ僕が気にしすぎてるのを見かねて、
『もっと気楽に考えろ!』
って言ってくれてたんだと思う。
彼女には確かに傲慢なところがあるけど、それは人間なら誰しもが大なり小なり持ってるところなんじゃないのかな。僕が『法律やルールを守って、子供達にそういう大人の姿を見せるべきだ』って考えてることでさえ、見ようによっては傲慢だとも言えると思うしさ。
結局、何もかも<見方>の問題なんだ。どこに基準を置いて、自分はどう生きていくかっていうのを自分で決める必要があるってだけなんだ。
そして僕は、人生の最後にそれを貫けたと思う。それまで言っていたことをひっくり返したことになったとしても、それを分かった上で、覚悟した上で、自分の意志でひっくり返すことができた。
それでいい……
『……ああ…そろそろだな……』
モルヒネだかなんだかの、強い薬のおかげで何とかもちこたえてた僕の体も、もはや限界だ。体の中のあらゆるところが機能を失っていってるのが不思議と分かる。手足の指先の末端部分から冷たくなって、感覚がなくなって、自分が消えていくような錯覚……
『これが……<死>か……』
だけど、まだだ…まだ、もう少し……
「アリーネさん……吉佐倉さん……みほちゃん……シェリーちゃん……エレーンさん……
ありがとう……最後にみんなに会えてよかった……
……
……」
僅かに残っていた埋もれ火がフッと消えてしまうように、僕の命が消えてしまうのを、僕はどこか離れたところから見ているような気がした。
「神河内さん…!」
「レンジ!?」
「おじさん……!」
自分の体は死を迎え、完全に機能を停止している筈なのに、なぜかみんなが僕を呼んでくれてるのが分かったのだった。
怪物達を始末し終えて元の公園に戻ってた僕達の前にアリーネさんが現れて、冷めた視線を向けながら嘲るようにそう言った。
だけどそんな皮肉も、もう僕には刺さらない。
だって、自分に残された時間が既に本当に残り少ないことを悟ってしまったから。そして、アリーネさんに言われたことなんかより、クォ=ヨ=ムイに騙されていた自分の愚かさの方がよっぽど苦痛だったから。
そして、言ったんだ。
「……ありがとう…アリーネさん……」
そう言った僕に、彼女は「ハッ…!」と鼻を鳴らしながら顔を背けた。その表情に、一瞬、苦しげなものがよぎったのが分かってしまった。あんな風に言いながらも、彼女なりに僕のことを気遣おうとしてくれてたのは、分かってたんだ。本当は、あれこれ僕が気にしすぎてるのを見かねて、
『もっと気楽に考えろ!』
って言ってくれてたんだと思う。
彼女には確かに傲慢なところがあるけど、それは人間なら誰しもが大なり小なり持ってるところなんじゃないのかな。僕が『法律やルールを守って、子供達にそういう大人の姿を見せるべきだ』って考えてることでさえ、見ようによっては傲慢だとも言えると思うしさ。
結局、何もかも<見方>の問題なんだ。どこに基準を置いて、自分はどう生きていくかっていうのを自分で決める必要があるってだけなんだ。
そして僕は、人生の最後にそれを貫けたと思う。それまで言っていたことをひっくり返したことになったとしても、それを分かった上で、覚悟した上で、自分の意志でひっくり返すことができた。
それでいい……
『……ああ…そろそろだな……』
モルヒネだかなんだかの、強い薬のおかげで何とかもちこたえてた僕の体も、もはや限界だ。体の中のあらゆるところが機能を失っていってるのが不思議と分かる。手足の指先の末端部分から冷たくなって、感覚がなくなって、自分が消えていくような錯覚……
『これが……<死>か……』
だけど、まだだ…まだ、もう少し……
「アリーネさん……吉佐倉さん……みほちゃん……シェリーちゃん……エレーンさん……
ありがとう……最後にみんなに会えてよかった……
……
……」
僅かに残っていた埋もれ火がフッと消えてしまうように、僕の命が消えてしまうのを、僕はどこか離れたところから見ているような気がした。
「神河内さん…!」
「レンジ!?」
「おじさん……!」
自分の体は死を迎え、完全に機能を停止している筈なのに、なぜかみんなが僕を呼んでくれてるのが分かったのだった。
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