58 / 93
大人である僕が
しおりを挟む
ミホちゃんに吉佐倉さんを呼んでもらって、僕は、四人に対して言わせてもらった。
「ごめんね……これまでみんなにはこういうことはさせたくなかったから留守番をお願いしてたけど、どうやらそういう訳にはいかなくなってきたみたいだ…」
「神河内さん…!」
僕が言おうとしてることを察して、吉佐倉さんが声を上げようとするのを、僕は力が入らなくて震える右手をようやく掲げて制しながら、続けた。
「吉佐倉さんの言いたいことも分かるよ……でももう、僕達が動き回るだけで大変なことになるのが分かった以上、もう全員が<加害者>にもなってしまってるんだと思う……だから僕達に残された手段は、いかに損害を小さくできるかっていうだけなんじゃないかな……なるべく早く…丁寧に終わらせるんだ……アリーネさんは軍人だから被害も損害も割り切って最も効率よく片付けようとすると思う……だから僕達は手分けして、残りの怪物達を、丁寧にそっと片付けることで少しでも被害を小さくしたい……
吉佐倉さん…力を貸してほしい……」
これまで僕が延々と考えてきたことをすべてひっくり返すことになるとしても、それはあくまで僕個人の拘りでしかなかった。もはやそれが通用しない状況になった今、自分自身の矜持すら捨てることになったとしてもかまわない。
「これは…大人である僕が唆したことだ……責任は全て僕にある……」
ここまでの発言を、僕は、吉佐倉さんが貸してくれていたスマホに録音してある。こんなこと、法的に責任を問われたりしないのは分かってるけど、万が一ってことを考えてね。
そんな僕を、吉佐倉さんが泣きそうな顔で睨み付けてた。
「私だって…もう、法的には<成人>です……私にも責任があります…!」
「そうか……分かった…ありがとう……」
こうして僕たちは、最後に残った怪物達を手分けして片付けることになった。
エレーンさんが僕の車椅子を押してくれて、みほちゃんが怪物を掃って。
吉佐倉さんとシェリーちゃんが一緒に他を回って。
こうして、残りの怪物達は、二時間ほどで片付いたのだった。
「ごめんね…結局手伝わせることになってしまって…」
帰り際、僕の車椅子を押してくれてたエレーンさんに、スマホの音声翻訳機能を使ってそう話しかけた。
今はまだ日本語の勉強中のエレーンさんと、ドイツ語どころか英語もロクに話せない僕とじゃ、ここまで殆ど会話もなかったけど、せめてそれだけは伝えておかなきゃと思ったんだ。
「私は問題ではありません。気にしないです」
自動翻訳アプリを通した言葉はなんかおかしな感じだったものの、彼女が『気にしてない』と言ってくれてるんだろうなってことだけは伝わってきた。
みほちゃんとシェリーちゃんはさすがに詳しい状況までは察することはできていなかったけど、高校生のエレーンさんは、元々日本のアニメが好きなこともあってか、こういう突拍子もない話についてはそれなりに造詣が深くて、大まかなところは察することができてたみたいだった。
「ごめんね……これまでみんなにはこういうことはさせたくなかったから留守番をお願いしてたけど、どうやらそういう訳にはいかなくなってきたみたいだ…」
「神河内さん…!」
僕が言おうとしてることを察して、吉佐倉さんが声を上げようとするのを、僕は力が入らなくて震える右手をようやく掲げて制しながら、続けた。
「吉佐倉さんの言いたいことも分かるよ……でももう、僕達が動き回るだけで大変なことになるのが分かった以上、もう全員が<加害者>にもなってしまってるんだと思う……だから僕達に残された手段は、いかに損害を小さくできるかっていうだけなんじゃないかな……なるべく早く…丁寧に終わらせるんだ……アリーネさんは軍人だから被害も損害も割り切って最も効率よく片付けようとすると思う……だから僕達は手分けして、残りの怪物達を、丁寧にそっと片付けることで少しでも被害を小さくしたい……
吉佐倉さん…力を貸してほしい……」
これまで僕が延々と考えてきたことをすべてひっくり返すことになるとしても、それはあくまで僕個人の拘りでしかなかった。もはやそれが通用しない状況になった今、自分自身の矜持すら捨てることになったとしてもかまわない。
「これは…大人である僕が唆したことだ……責任は全て僕にある……」
ここまでの発言を、僕は、吉佐倉さんが貸してくれていたスマホに録音してある。こんなこと、法的に責任を問われたりしないのは分かってるけど、万が一ってことを考えてね。
そんな僕を、吉佐倉さんが泣きそうな顔で睨み付けてた。
「私だって…もう、法的には<成人>です……私にも責任があります…!」
「そうか……分かった…ありがとう……」
こうして僕たちは、最後に残った怪物達を手分けして片付けることになった。
エレーンさんが僕の車椅子を押してくれて、みほちゃんが怪物を掃って。
吉佐倉さんとシェリーちゃんが一緒に他を回って。
こうして、残りの怪物達は、二時間ほどで片付いたのだった。
「ごめんね…結局手伝わせることになってしまって…」
帰り際、僕の車椅子を押してくれてたエレーンさんに、スマホの音声翻訳機能を使ってそう話しかけた。
今はまだ日本語の勉強中のエレーンさんと、ドイツ語どころか英語もロクに話せない僕とじゃ、ここまで殆ど会話もなかったけど、せめてそれだけは伝えておかなきゃと思ったんだ。
「私は問題ではありません。気にしないです」
自動翻訳アプリを通した言葉はなんかおかしな感じだったものの、彼女が『気にしてない』と言ってくれてるんだろうなってことだけは伝わってきた。
みほちゃんとシェリーちゃんはさすがに詳しい状況までは察することはできていなかったけど、高校生のエレーンさんは、元々日本のアニメが好きなこともあってか、こういう突拍子もない話についてはそれなりに造詣が深くて、大まかなところは察することができてたみたいだった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる