200万秒の救世主

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
56 / 93

悔恨

しおりを挟む
『人間大の物体が秒速二千キロメートルで移動してるのと同じになる。そうすれば何が起こるかくらいは、分かるんじゃないのか?』

クォ=ヨ=ムイのその言葉に、僕達は完全に察してしまった。そして、自分達が取り返しのつかない失敗をしてしまったことに気付いたんだ。

「シーット!! 奴は最初からそのつもりだったんだ! 私達に『世界を救え』とか調子のいいことを言ってその気にさせて、実際には破壊の手助けをさせて嘲笑うつもりだったんだ!!」

アリーネさんが激高しながらどこから持ってきたのかナイフを手に、植え込みの枝を手当たり次第に薙ぎ払っていた。そんなことをすればますます衝撃波が発生するのに……

僕がそう思いつつ、苦しくて声を出せないでいると、

「やめてください! そんなことしたら余計に大変なことになるって分からないんですか!?」

と、吉佐倉《よざくら》さんがなるべく体は動かさないようにしながら叱責した。

だけどもう、いまさらそんな風に気を遣ったって手遅れなことは、彼女にも分かってると思う。だから余計に苛立ってしまうんだろうな。

人間大の物体が、秒速二千キロで移動したことによって発生する衝撃波が果たしてどれほどのものか、僕にはまったく分からない。

いつだったか、ロシアで隕石が落ちた時、衝撃波で大変な被害が出たらしいけど、その時の隕石の速度が確か秒速数十キロってレベルだったんだっけ。

それであれだけの被害が出るんだから、秒速二千キロなんていったら、それこそ何が起こるのか想像もつかない。

僕達の目からは、今はただ砂ぼこりが立ってるだけに見えてても、時間が経ては人も物も無茶苦茶に破壊されていく光景が繰り広げられていくことは分かってしまう。それこそ、一つ目の化け物が起こす惨劇以上の恐ろしいものになるだろうなってことだけは想像できてしまう。

『アリーネさんの言う通りだ……僕達はクォ=ヨ=ムイにまんまと騙されていいように利用されたんだ……

ちくしょう……僕の人生の最後がこれかよ……』

僕はただ、泣いていた。自分の愚かさが、迂闊さが、許せなくて、やるせなくて、泣いていた。

そして、みほちゃんやシャリーちゃんやエレーンさんにまで加担させてしまったことが悲しかった。

特にみほちゃんは、最初の病室で僕が散々動き回ったから、みほちゃんの両親もきっと衝撃波に襲われる筈だ。僕がみほちゃんの両親を殺すことになるんだ……

『ごめん…ごめんねみほちゃん…本当にごめん……』

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...