200万秒の救世主

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
55 / 93

明かされた真実

しおりを挟む
正直もう、あれこれ考えるのも辛くなってきてるのを感じてた。何かを考えようとすると体中から悲鳴のようなものが聞こえてくる感じがして、頭がおかしくなりそうだった。

いや、たぶん、もう既に僕は頭がおかしくなってるんだろう。

こんなの、正気じゃいられない。

だって、みんなを守る為にこれまでやってきた筈なのに、こんなことって……



「…これって、何でしょう?」

少しだけ楽になって傍に付き添ってくれてた吉佐倉《よざくら》さんの顔を見た時、彼女は青ざめた様子で硬い声を発してた。

ほとんど頭も動かさずに彼女の視線の先に僕も視線を向けると、奇妙な違和感が。

『あれ? あんな風になってたっけ…?』

それは、もう見慣れた公園の光景の筈なのに、何かが違ってたんだ。

「土埃……?」

地面から数センチの高さまで土色の小さな壁のようなものが。それも、波紋のように並んでいくつも。

それを見付けたみほちゃんが、

「わあ、おもしろい。なにこれ?」

って言いながらそれに触った。するとその小さな土壁のようなものは煙のようにふわりと散らばる。そんな様子が面白いのか、みほちゃんとシェリーちゃんが脚で次々と踏み潰し始めた。積もった雪にわざと足跡を付けようとするかのように。

この時、みほちゃんたちはただ面白がってたけど、それが実は大変なことの予兆だったと僕達が気付いたのは、すべてが手遅れになってからだった。

「やっぱりおかしいですよ、これ…!」

吉佐倉さんが強張った表情で言う。

すると、アリーネさんが、

「ソニックブーム……?」

って。

ソニックブーム…? それってもしかして、物体が音速を超えて移動した時に生じるっていう衝撃波のこと…?

そのことに気付いた時、僕と吉佐倉さんとアリーネさんは顔を見合わせていた。

「これって、僕達が動き回ってる所為で生じてるっていうことなのか……?」

絞り出すように僕が言った時、

『そうだ。今頃気付いたか。やはり人間は愚かだな』

という声が、僕達の頭の中に直接響いてきた。

「クォ=ヨ=ムイ…!?」

「どこにいる! クォ=ヨ=ムイ!」

吉佐倉さんとアリーネさんが声を上げて周囲を見回すけど、どこにもいない。どこかから僕達の頭の中に直接話し掛けてるんだ。

『私はお前達を二百万倍に加速してそれに耐えられるようにしたが、別にそれによって生じる全ての現象を無視できるようにした訳じゃないぞ。お前達が秒速一メートルで動けば、それは人間大の物体が秒速二千キロメートルで移動してるのと同じになる。そうすれば何が起こるかくらいは、分かるんじゃないのか?』

……なんだって……!?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...