200万秒の救世主

京衛武百十

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アリーネ・エンデ・カシキの嘆息 その5

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対テロ戦闘を行う部隊には、所属や個人が特定されて報復テロの標的にならないようにする為に、一見しただけではどこの部隊か分からないように偽装しているものも少なくありません。そして私が所属していた部隊もそうでした。

とは言え、それだけの能力を持つ部隊という点だけを見てもおのずと候補は限られてくるので、当然、その強行突入を行ったのが我が国の部隊であると推測して騒ぎ立てる者はいました。

決定的な証拠については掴ませていませんのでマスコミがいかに批判しようと、上層部は知らぬ存ぜぬを貫き通そうという姿勢だったようです。

実際、そういうことはこれまでに何度もありましたし、我が軍の関与を示す客観的な証拠もありませんので、それについては結局、うやむやとなりました。

しかし、私は哨戒任務を受け持つ隊に配備され、緊張感の乏しい退屈な毎日を送っていたのです。

そこに降って湧いた今回の事態。作業自体は子供のお遣い以下の酷いものですが、人類の危急存亡の危機という、軍人としてはこれ以上ないという役目に、少なくない興奮を覚えました。

なのに、一緒にその役目を担うはずの者達は、死に掛けの病人とクレーマーじみた堅物女と子供と、どうしようもない最低最悪のチームという現実に、溜息しか出てきません。

しかも、私達にその役目を割り振ったというのは、<神>を名乗る不逞の輩。<主>も、私の信仰を試そうとなさっているのでしょうか。

だとすれば、それがどんなに困難に思えても、私は応えなければいけません。

こんな非常時にあってもルールや法律に拘る不可解なレンジ・カミコウチなる人物を支えて邪悪な者共を退けるべく、私は努力します。

神を騙る<悪魔>が、『怪物を始末すれば癌を治してやる』という約束など守るとも思えませんが、少なくともそれが嘘であると確定するまでは、言うことを聞いているふりもしましょう。

早々に、提示された条件である百匹の怪物を始末し、後はレンジを助けます。そしてさすがにいよいよ体が辛くなってきたらしいレンジが、私が拝借してきた車椅子に座るのを見て、どれほど口では綺麗事を並べようとも、日本人も所詮はその程度だと分かって安心しました。

さあ、これからが本番です。しゅが作りたもうたこの世界に仇なす不埒な者どもに鉄槌を食らわしてやらねばなりません。

共に参りましょう。しゅの御心のままにあればすべては救われるのです。きっとレンジの癌も、主の御業によりたちどころに癒えるに違いありません。

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