200万秒の救世主

京衛武百十

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アリーネ・エンデ・カシキの嘆息 その3

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しかし、そうは言っても自らの身を守る大原則は『やられる前にやれ』の筈です。『政治家達はいったい、何を考えているんだ?』というのも正直な気持ちでした。私達軍人は見殺しにしてもいいのかと。

最初の頃はそうも思っていました。

だけど実際に訓練を行い模擬戦なども重ねるにつれ、『最初の一撃で、反撃さえできないように徹底的に叩きのめす』ということがいかに困難かを理解させられていきました。特に対テロリスト戦を想定した訓練では、完全に制圧に成功した筈にも関わらず、人質役に紛れていたテロリスト役の教官に自爆(に見立てたクラッカーを鳴ら)されてしまいました。

人質とテロリストの区別がつかなかったのです。

敵を完全に殲滅しようとしても、それは現実には非常に難しいことだというのが分かります。そして反撃されて結局は被害が出る。被害を防ぐという点において<先制攻撃>は、実は必ずしも有効な手段とは限らないという事実を思い知らされます。

しかし、理屈では分かっていても感情は納得してくれません。ましてや明らかに相手が敵意を向けているのにも拘らず向こうが手を出すまで待てというのはやはり理不尽としか思えないのです。

同じ神の御使いたる同胞を見殺しにするようなことが許されるのでしょうか?

私にはとてもそうは思えません。だから反撃されるというリスクはあっても先に攻撃すべきだと私は思うのです。

でも同時に、軍人たるもの、命令には絶対従わなければいけません。『攻撃するな』と命令されれば攻撃する訳にもいきません。

そんな葛藤の中、私が所属していた部隊が、テロリストの拠点を叩く為に派遣されました。

そのテロ組織は既に我が国に対して攻撃を仕掛けているので、苛烈な<神罰>を与えてやらなければいけません。先に攻撃したのは向こうなのですから、遠慮はいらないわけです。

作戦は順調に進み、私達の部隊はテロリストを順調に排除していきました。

ですが、テロリストは、こともあろうに人質を取って学校に立てこもったのです。その卑劣な行いに私は激しく憤りました。しかし、学校の職員や近所の住人らも人質となり、テロリストはその中に紛れてしまい、区別がつけられません。

私の部隊内でも、対応については意見が分かれました。

「たとえ犠牲者を出してでも先に攻撃し、テロリストを殲滅すべきだ」

という意見と、

「テロから守るべき市民を我々が攻撃するようなことをしては本末転倒だ」

という意見です。

これは私達を指揮する上官達の間でも同じ形で意見が分かれたようでした。

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