200万秒の救世主

京衛武百十

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再出発

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まったく。こんなとんでもない状況だってのに、こうやってウダウダ考える余裕があるっていうのがすごく変だ。意味が分からない。でも、そもそも本来は有り得ないことが起こってるんだから、それに意味を見出そうとしても無駄なのかな。

「ふう……」

取り敢えずうとうととだけど少しは寝られていくらか体が楽になった。

「じゃあ、行こうか」

そう言って立ち上がる僕を、吉佐倉よざくらさんだけじゃなく、エレーンさんも、そしてアリーネさんまでもがどこか辛そうな表情で見る。みほちゃんだけはまだよく分かってないみたいだけど、でも僕の傍にはいようとしてくれる。

その一方で、クォ=ヨ=ムイは姿を現さなかった。まあ、それはむしろその方がありがたい。彼女に振り回されるのは正直ごめんだ。

意識を集中し、頭の中に思い浮かべられた場所へ『飛ぶ』と考える。するとその瞬間、画面が切り替わるように周囲の景色が変わる。

「ここは…?」

吉佐倉さんが呟くと、

「中国……いや、香港デスか」

とアリーネさんが応える。確かに僕もテレビとかで見た景色だと思った。ジャッキー・チェンとかが街中を走りまわってた時に見たのと同じ気がする。

乱雑としたその人混みの中に、怪物はいた。エレーンさんがシェリーちゃんとみほちゃんの注意を引いてくれてる間に、それを片付ける。だけど、どうやらギリギリ間にあったみたいだ。怪物の触手は、そこにいた人達の首には届いていなかった。

より状況が深刻なところから順番に対処していって、ようやく追いついたってところかな。なら、ここから先は少しは気が楽になるか。

あと、若い女性もそこにいたのに、クォ=ヨ=ムイがいないことで動き出すこともなかった。それについてもホッとする。これ以上増えるのはごめんだ。いろいろ最初はぎくしゃくもしたけど、アリーネさんも割と大人しくしてくれてると思う。せっかく微妙なバランスかもしれなくても落ち着いてるところに新しい人が加わってまた波風立つのは避けたい。精神的に辛い。

そういうことにもホッとしつつ、次へと移動した。今度は日本のどこかだった。お城が見える、けど、どこだろう?

するとみほちゃんが言った。

「あ、わかやまじょうだ!」

って、え? 知ってるの?

「おとうさんのほうのおじいちゃんとおばあちゃんのおうちあるんだよ。おしろからむこうにいったところに」

と彼女が指差したのは、太陽の位置から考えると東の方だったと思う。そうか。父方のお祖父ちゃんやお祖母ちゃんが住んでるんだな。それで遊びに来たことがあるとかか。

怪物は、お城が見える歩道を歩く団体客らしい人達のところにいた。だから僕は、早々に片付けたのだった。幸い、間に合ったみたいだし。

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