200万秒の救世主

京衛武百十

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五人目

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昼食を終えてベンチに横になってた僕は、半ば朦朧とした意識の中で、濡らしたハンカチで僕の汗を拭いてくれてた吉佐倉よざくらさんや、エレーンさんと楽しそうに話をしてるみほちゃんの様子を何となく見てた。

ドイツの高校に通う日本のアニメ大好きなオタク女子っていうエレーンさんは、女児向けアニメにも詳しいみたいで、十何年だかシリーズが続いてる、日曜朝の人気女児向けアニメの話でみほちゃんと話が弾んでるみたいだった。

こんな訳分からない状況に巻き込まれたみほちゃんとそうやって話をしてもらえるだけで、すごくありがたかった。ハーレムとかそんなの、どうでも良かった。だいたい、こんな体調でそんな気分になれる訳ないだろう?

あのクォ=ヨ=ムイは、人間じゃないから人間のこういう苦しみみたいのが理解できないんだろうなってしみじみ思う。

人間にはできないことができて、たぶん死ななくて、そんな存在の<恐ろしさ>ってやつも思い知らされた気がする。

こんな風になる前にそれを実感できてたら、人間社会の些細なあれこれなんて気にならないようになってたかな。

まったく……大事なことほど手遅れになってから気付くものってことなのか……

そんなことを考えながらうとうとし始めた頃、アリーネさんが戻ってきた。また女の子を連れて。

「フィリピンの小学校に通う。シェリーデス。学校で襲われてたところを助けまシた。でもやっぱりショックを受けてて説得に手間取り、二十二体しか倒せませんでシた」

だって。

アリーネさんの後ろに隠れるように縋りついてたその子は、小学校の高学年くらいの褐色少女だった。

……って、ハーレムとか言いながら、半数以上が僕が手を出したらその時点でアウトな女の子ばっかりじゃないか…!

なんてことを心の中でツッコめるくらいには楽になってきたかな。

まあそれはさておいて、これでアリーネさんが倒したのは四十体か。あと六十体。

僕も頑張らなくちゃ。折れた心もちょっとは回復した気がする。

シェリーって子も、日本のアニメに興味があったのか、エレーンさんが英語で話しかけると、みほちゃんと一緒に三人でベンチに座って話し始めた。英語で話してるのになんでアニメの話してるか分かったかと言えば、分かりやすすぎるキャラの名前がいくつも出てきたから。

って言うか、すごいな、日本のアニメ。ドイツ人の女の子とフィリピン人の女の子とも共通の話題で盛り上がれるなんて。

だけどそうやって年少組三人でまとまってもらえてればこっちとしても助かるよ。

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