200万秒の救世主

京衛武百十

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吉佐倉よざくらさんがどうかってのは僕には正直関係ないからどうでもいい。少なくとも重い病気を抱えて辛い思いをしてる人間を蔑ろにするような人だったり、小さい子を邪険にするような人じゃないならそれで十分だ。

それよりも今は、

「アリーネさん。何体片付けられましたか」

「十八体デスね。エレーンのことがなければ三十体は片付けられまシた」

「そうですか。じゃあ、僕がこれまで片付けた分と合わせて四十五体ですね」

三十というのはどうか分からないけど、さすがに手際が良いな。軍人だから躊躇がないってことか。

だけど十八体ってことは、アリーネさんにお願いできる分はあと八十二か。

でも……クォ=ヨ=ムイの言ってること自体がどこまで信用できるか分からないし、そもそも治す気が本当にあったのかも分からないから、あまり気にしないでおこう。

僕自身、『こんなに辛いなら、早く楽になりたい』ってことで、正直、諦めの気持ちもあるんだ。本当に完全に健康な状態に戻れるのならとも思いつつ、同時に、これまでロクなことがなかったこの世にしがみついてもって気分もある、生きてたっていいことがある気がしないしさ。

『だからもう、百と言わず手分けしてさっさと終わらせればいいんじゃないかな……』

なんて思ったりもする。

「エレーンさんはどうしますか? 僕達と一緒に行きますか? それともここで待ってますか?」

僕自身も怪物退治に出発しようと用意を済ませてから、エレーンさんに訊いてみた。

「わ……私は……」

自分と同じ学校の友達が犠牲になった光景を思い出したんだろうな。ただでさえ白い肌をさらに真っ白にして、彼女は戸惑っていた。

「無理はしなくていいですよ。もしよかったらみほちゃんとここで待っててください」

吉佐倉さんがそう言うと、みほちゃんは、

「イヤだ! わたしはいっしょにいく!」

と言い張る。

「でも、みほちゃん…」

何とか彼女を諭そうと伸ばした吉佐倉さんの手をするりと躱して、みほちゃんはやっぱり言った。

「いくの!」

するとアリーネさんが、

「行くと言ってるのを無理にとどめることはできまセん。一緒に行くべきでショウ」

って。吉佐倉さんはアリーネさんをキッと睨み付けるけど、全く意にも介してなかった。

そんな僕達の様子を見て、エレーンさんが、

「一人になるのは怖いです。私も行きます……」

とおずおずと手を上げて告げた。

「そんな……」

吉佐倉さんとしては、みほちゃんとエレーンさんにそういうのを付き合わせられないと思ったんだろうな。その気持ちも分かる。僕だってその方がいいと思う。

だけどこうなったら、やるしかないって思うんだ。言い合いをしてる間にも時間は過ぎるから。

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