200万秒の救世主

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
27 / 93

選択

しおりを挟む
吉佐倉よざくらさんがどうかってのは僕には正直関係ないからどうでもいい。少なくとも重い病気を抱えて辛い思いをしてる人間を蔑ろにするような人だったり、小さい子を邪険にするような人じゃないならそれで十分だ。

それよりも今は、

「アリーネさん。何体片付けられましたか」

「十八体デスね。エレーンのことがなければ三十体は片付けられまシた」

「そうですか。じゃあ、僕がこれまで片付けた分と合わせて四十五体ですね」

三十というのはどうか分からないけど、さすがに手際が良いな。軍人だから躊躇がないってことか。

だけど十八体ってことは、アリーネさんにお願いできる分はあと八十二か。

でも……クォ=ヨ=ムイの言ってること自体がどこまで信用できるか分からないし、そもそも治す気が本当にあったのかも分からないから、あまり気にしないでおこう。

僕自身、『こんなに辛いなら、早く楽になりたい』ってことで、正直、諦めの気持ちもあるんだ。本当に完全に健康な状態に戻れるのならとも思いつつ、同時に、これまでロクなことがなかったこの世にしがみついてもって気分もある、生きてたっていいことがある気がしないしさ。

『だからもう、百と言わず手分けしてさっさと終わらせればいいんじゃないかな……』

なんて思ったりもする。

「エレーンさんはどうしますか? 僕達と一緒に行きますか? それともここで待ってますか?」

僕自身も怪物退治に出発しようと用意を済ませてから、エレーンさんに訊いてみた。

「わ……私は……」

自分と同じ学校の友達が犠牲になった光景を思い出したんだろうな。ただでさえ白い肌をさらに真っ白にして、彼女は戸惑っていた。

「無理はしなくていいですよ。もしよかったらみほちゃんとここで待っててください」

吉佐倉さんがそう言うと、みほちゃんは、

「イヤだ! わたしはいっしょにいく!」

と言い張る。

「でも、みほちゃん…」

何とか彼女を諭そうと伸ばした吉佐倉さんの手をするりと躱して、みほちゃんはやっぱり言った。

「いくの!」

するとアリーネさんが、

「行くと言ってるのを無理にとどめることはできまセん。一緒に行くべきでショウ」

って。吉佐倉さんはアリーネさんをキッと睨み付けるけど、全く意にも介してなかった。

そんな僕達の様子を見て、エレーンさんが、

「一人になるのは怖いです。私も行きます……」

とおずおずと手を上げて告げた。

「そんな……」

吉佐倉さんとしては、みほちゃんとエレーンさんにそういうのを付き合わせられないと思ったんだろうな。その気持ちも分かる。僕だってその方がいいと思う。

だけどこうなったら、やるしかないって思うんだ。言い合いをしてる間にも時間は過ぎるから。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...