200万秒の救世主

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
21 / 93

三人目

しおりを挟む
正直、今の僕の命が二百万秒残ってるのだとしても、果たしてそのうちどれくらい、こうして立ち上がって動けるのかという点ではまったく分からない。下手をすれば数日中にも起き上がることさえできなくなる可能性がある。

それを思えば、あまりのんびりはしてられなかった。体が動くうちに、やれるところまでやらなくちゃ。せめて、既に<手遅れ>になってる分だけでも、僕が片付けたい。

だからみほちゃんが眠ってる間にも、僕は吉佐倉さんと一緒に、怪物を始末して回った。

と、その中で、ロンドンらしいところで怪物を始末した時に、既に手遅れになってしまってた犠牲者達の中で、辛うじて無事な若い白人女性がいた。

「ようやく三人目、と」

クォ=ヨ=ムイが嬉しそうに言いながらパチンと指を鳴らす。

するとその女性は、

「Oh! My God!!」

と声を上げた。でも次の瞬間、

「これはナニゴトでスか!?」

って、片言だけど確かに日本語でそう僕達に訊いてきた。僕達が日本人だと思ったということだった。

女性の名前は、アリーネ・エンデ・カシキ。日本人女性を父方の祖母に、アメリカ人男性を同じく父方の祖父に、ドイツ人女性を母方の祖母に、イギリス人男性を母方の祖父に持つという、国際色豊かなアメリカ人女性で、現在、アメリカ軍グアム基地所属の海兵隊員だった。休暇中に祖父の実家を訪ねてきて、駅から出たところで事件に巻き込まれたらしい。

なんだこの盛り過ぎ属性は?

でも、そんなことはさて置いて、事情を説明すると、さすがに現役のアメリカ海兵隊ということで、

「Fuck! 何でスかそれは!? このような人類の危急存亡の事態にあって何を呑気なことをしているのデスか!? これだから日本人は!!」

だって。

「このような事態こそ我々軍人の役目デス! 民間人は大人しくしてナさい!!」

と、いささか尊大とも言える態度でそう言ってのけた。

だけど、

「あ~……悪いがそういう訳にもいかんなあ。元気なのはいいが、お前、どうも私の趣味に合わん。だからお前にはやらせん。引っ込んでろ」

とかなんとか、クォ=ヨ=ムイが酷く不機嫌そうな表情で言った。

『うわ…! これはヤバいやつだ……!』

取り敢えずここまでクォ=ヨ=ムイのことを見てきて、彼女はどうやら、自分と同じように尊大なタイプには厳しいということが感じられてきた。そういう意味では、アリーネさんは一番マズいタイプなのではないかと……

「なんでスか!? アナタ、我がアメリカ海兵隊にケンカでも売るというのでスか!?」

まったく臆することなく噛み付くアリーネさんに、クォ=ヨ=ムイの目がギラリと不穏な光を放つ。

「あ”? 貴様、第七艦隊ごとこの地球上から消し去ってやろうか……!?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...