200万秒の救世主

京衛武百十

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二人目

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「のどかわいた…」

みほちゃんが不意にそんなことを言い出した。あんまり長距離を歩いた感じはしないけど、次々景色が変わるから、何となくすごくいろんなところに行ったような気分にはなるな。

と言うか、実際に行ってるけど。海外旅行なんて興味もなかったから、何気に初海外だったんだよな。

なんてことはさておき、喉が渇いたとなれば水分補給しない訳にもいかないな。

さりとて、自動販売機は明らかに品物が出てこないだろうし、スーパーとかに寄ろうにも僕は外国のお金とか持ってない。

「勝手に持ってくればいいじゃないか」

ニヤニヤ笑いながらクォ=ヨ=ムイが言う。

「子供の前でそんなこと言わないでください…!」

僕がそう言うと、みほちゃんも僕の後ろに隠れるようにしてだけど、

「かってにもってっちゃいけないんだよ。どろぼうだよ」

ってクォ=ヨ=ムイに向かって言ってくれた。ああ、いい子じゃないか。

「…へっ……」

クォ=ヨ=ムイはニヒルな笑みを浮かべながら肩をすくめる。本当に人を苛立たせる天才だな。いや、神様だけど……

まあそれはさておき、仕方ないので一旦、日本に戻ることにした。日本なら、病室を出る時に持ってきた財布に入ってるお金が使えるし。お金さえ置いておけば泥棒には…、ならないよな、たぶん。

だけど最近は、レジでバーコードとか読ませて商品管理してるんだっけ。そうするとコンビニとかでお金だけ置いていっても店側は困るのかな。

「世界が終わるかどうかという時に、よくそんな呑気なこと言ってられるな、お前」

呆れたように言ってくるクォ=ヨ=ムイを無視して、僕は次に立ち寄った日本のどこかの商店街の中で、バーコードを読むやつじゃない昔ながらのレジを使ってるタコ焼き屋の店頭の冷蔵庫からペットボトルのフレーバー付きミネラルウォーターを出して、作り置きのタコ焼きももらって、代わりにお金をレジの脇に置いた。

そのペットボトルは小さい子でも握り潰せるくらいに柔らかいものだったから、みほちゃんにもちょうどいいと思った。

「ぎゅっと握ったらお水が出てくるから、それをお口に入れると飲めるよ」

飲み方を教えてあげると、「こうかな?」って言いながらぎゅっとペットボトルを握ったみほちゃんが、

「わあ、おもしろい!」

って、空中に浮かんだ水の塊を口に入れて飲んでた。

僕はそのうちに、商店街の中に現れてた怪物を追い払う。

でも今回のは、みほちゃんの為に日本に戻ってきただけだったから、割とまだ余裕のあるところだった。

大学生くらいの若い女の子の首に触手が伸ばされてたけど、届いてなかったんだ。

「やれやれ、やっと二人目か」

そう言ってクォ=ヨ=ムイは指をパチンと鳴らしたのだった。

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