200万秒の救世主

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
11 / 93

現実

しおりを挟む
白人女性の首に怪物の触手が半分以上食い込んでいるのを見て僕は体が震えるのを感じた。もう完全にその女性は助からないと直感的に悟ったからだ。

「残念だったな。ハーレムに加えられなくて」

クォ=ヨ=ムイの言葉が、手遅れだったことを裏付けていた。

ここまではどこか緊張感に乏しい、アトラクションのような感覚がなかったと言えば嘘になる感じだったけれど、これが紛れもなく人の命がかかった現実なんだということが改めて思い知らされた気もする。

ただ、だからといってここで僕が取り乱すと、あまり事情を分かってなさそうなみほちゃんがショックを受けそうだから、僕は敢えて平然としてるふりをした。

そんな僕をクォ=ヨームイがニヤニヤと意味深な笑みを浮かべながら見てた。

『くそっ…!』

なんて心の中で吐き棄てると、それを読んだのかクォ=ヨ=ムイはますますイヤらしい笑みを浮かべる。

僕が苛立ってることそのものが面白いんだろうな。

気にするだけ無駄だと割り切るしかない。

次に移動した先は、有名なマーライオンが見えるからシンガポールか。ここでも観光客らしい人波の中に一つ目の怪物が現れていた。しかも、三人、さっきの白人女性と同じように首に触手が食い込んでいる。

『く……またか……』

動揺しそうになる自分を抑えて、怪物を払い除ける。

「なんだお前、ハーレム要員は要らないのか? さっきから手遅れな奴ばっかり片付けて」

「いいから黙っててください。俺が引き受けたんだから俺のやり方でやらせてもらいます…!」

明らかにわざと癇に障る言い方をしてくるクォ=ヨ=ムイに対して、つい刺々しい言い方をしてしまった。ハッとなってみほちゃんを見ると、また怯えたような表情になってる。

「ごめんね。忙しくてイライラしちゃってたね。でもみほちゃんが悪い訳じゃないからね」

なるべく優しい言い方を心掛けて、みほちゃんの頭をそっと撫でる。すると彼女も少しだけ安心したような顔をしてくれた。

それからも、オーストラリア(例のオペラハウスが見えた)、ドイツ(国旗が上がってた)、インド(建物の感じからそう思ったが、もしかしたらネパールかも?)、アフリカのどこか(黒人ばっかりだったからたぶん)、中東のどこか(砂漠が迫ってたのといかにもな服装から)、ドバイ(ブルジュ・ハリファが見えたからきっと)、ハワイ(雰囲気でそう感じただけ。ひょっとしてグアム?)、北欧っぽいどこか(完全に雰囲気だけでそう思った)を、体感では一時間ほどで回ったのだった。

正直どれも手遅れだったけどね……

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...