我が娘が風呂上りにマッパで薄暗い部屋でPCの画面を見ながら不気味な笑い声を上げてるんだが?

京衛武百十

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『精密検査を受けることになった』

ダンナのその言葉に私は、「え……っ?」ってなった。

「それって、どういう……?」

サーッて血の気が引いて体が冷たくなるのを感じる。

「今のところはなんとも言えないよ。はっきりさせるために精密検査を受けるんだからね」

「あ…そう、そうだよね」

ダンナが穏やかな表情でそう言ってくれたから、私もつい、それにすがっちゃった。

『きっと別に大したことないんだ』

そう思ってた。

だけど…

だけど、翌日、病院に精密検査を受けに行ったダンナから、電話があった。

その日私は、皮肉なことに夏休みに入っていて観音かのんも夏休みで、二人一緒に病院へと向かった。 そしてそこで言われたのが、

「 ご主人の胃に癌が発見されました。 進行性の癌で、すでに胃壁を破って腹腔内に微細な癌細胞がばら蒔かれている状態です」

医師の言葉に私は思わず、

「 そんな……! 去年の健康診断の時には何も言われなかったって主人が……!」

食ってかかるようにそう告げる私に、 医師は、ただ、冷静に、

「非常に進行の早いスキルス性胃癌と言われるものです。そのため、検診の際にはまだ非常に小さかったことで癌であると見抜けなかったのでしょう。少なからず起こり得ることです」

「……!」

信じられなかった。信じたくなかった。『どうしてそんなことに?』って思った。

観音かのんはそれこそ沈痛な表情をして、ただ黙っていた。何を言ったらいいのか分からないんだと思った。

それから医師は、

「現在、ご主人は、ステージⅣと呼ばれる段階です。しかもご主人の場合は、腹腔内に癌細胞がばら撒かれている状態ですので、外科的手術を行うとかえって癌細胞が広まり、進行を早める可能性があるため、摘出手術は行えないケースです。

それゆえ、まずは抗がん剤治療を始めることになるでしょう。抗がん剤が効果を発揮し、微小な癌細胞が消え、胃にできた癌本体も小さくなれば、後は外科的手術で摘出も可能になる可能性はあります。

ご主人の癌の場合、抗がん剤が効果を発揮する可能性は、約三十パーセントです。これが効かなかった場合には、次の抗がん剤を試すことになります」

とかなんとか、いろいろ説明してくれてたけど、正直、この時には半分も頭に入ってなかった気がする。

『なんで……どうして……私達が何か悪いことでもしたの……?』

そんな考えばかりがぐるぐると巡ってた。

なのにダンナは、顔色こそは青ざめてたけど、でも、どこか、他人ごとのような、冷めた表情だったような気もする。

自分のことなのに、どうしてそんな表情ができるんだろう……?

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