我が娘が風呂上りにマッパで薄暗い部屋でPCの画面を見ながら不気味な笑い声を上げてるんだが?

京衛武百十

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小さな躓き

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で、結局、この日も五月の<主人公補正>にいいようにやられて、観音かのんから見れば、散々な結果だった。

「にしししししし♡」

勝ち誇ったように笑う五月に、

「ぐやじいいい~!」

って声を上げる観音かのんだけど、悔しいのは事実でも、だからって、彼女の事を嫌いになるとか、恨むとか、そういうのはなかった。だって、五月と真凛が帰った後に、

「なんなの!? マジであれ何なの!? おかしいじゃん! バグってるよ! 狂ってる! ムキーッッ!!」

とかなんとか吠えてる観音かのんの頭をよしよしと撫でて、その<悔しい気持ち>を、私が受け止めてたからね。

そうしているうちにだんだん落ち着いてきて、観音かのんは私に抱きついて、

「え~ん! 悔しいよ~ママぁ~」

だって。でも、『悔しいよ』とは言いつつ、その様子は芝居がかっていて、悔しさそのものは割り切れてるんだって分かるものだった。

私に甘えることで癒されて、<自分の思い通りにいかない現実>と向き合って、<自分の思い通りにいかない現実を自分の中に落とし込んで行くプロセス>を経ているんだ。

以前は、ダンナがやっていたそれを、私もやるようになったってことだね。

これは、それこそ、観音かのんが赤ん坊の頃からダンナが彼女に対してやってたことだった。

ダンナは観音かのんに対してすごく優しいけど、だからといって、彼女の要望のすべてを百パーセント叶えられるわけじゃない。どう頑張ったって実現できないことはある。

いくら達観しているようには見えても、観音かのんの気持ちの奥底には、

『お母さんに帰ってきてほしい』

というのもあるそうだ。だけど、ダンナには、それは叶えられない。実の母親に無理を言って強引に連れ戻しても、上手くいく目がないことは、母親をよく知る誰もが口を揃えて言うことだ。

『あの人が結婚して子供を産んだということ自体がもう<奇跡>だから、奇跡は二度は続かない』

ってさ。

ドラマやアニメならその奇跡が二度も三度も続いたりもするんだろうけど、現実は、そうじゃない。ここで、

『現実なんてクソだ!』

とか泣き言を口にしたって、何も変わらない。一時的に現実から逃れて気持ちを落ち着かせる猶予を確保するのは必要だし効果もあると思うけど、でも、いつかは、現実と向き合えるようにならないと、それこそ引きこもったりしなきゃならなくなるかもしれない。

<引きこもり>も、<立ち直るためのプロセス>としてならアリでも、ずっととなるとね。

それじゃ何の解決にもならないと私は感じてる。

だったらさ、一つ一つの<小さな躓き>に丁寧に対応して、そこから立ち上がる経験を積み重ねてもらうのが、親の役目だと思うんだ。

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