我が娘が風呂上りにマッパで薄暗い部屋でPCの画面を見ながら不気味な笑い声を上げてるんだが?

京衛武百十

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ダイスの神様

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この頃、観音かのんは、TRPGというのにハマってて、五月や真凛が来る度に三人で楽しんでいた。

一ヶ月千円の小遣いをコツコツと貯めて、何千円もするぶ厚い本を買って、それでプレイしてたみたい。

大体いつも、観音かのんが管理役で、五月と真凛を迎え討つ立場らしいんだけど、

「さあ、san値チェックのお時間で~す」

と、サイコロの目が悪いとそのままゲームオーバーになったりもする、プレイヤーにとっては大変なピンチの場面なのに観音かのんはとても楽しそうで。

だけど、プレイヤーの五月は、ためらうことなくサイコロを振って、確率は五分の一程度の完全セーフの目を出してみせて、

「ギャハハハハ!」

って高笑い。

「なんじゃそりゃーっ!!」

観音かのんの方が悲鳴を上げてた。

一方、真凛はダメージを受けてて、

「普通はこうなんだよ! おかしい! ダイスの神様は五月をえこひいきしてる!」

凹んでる真凛を指差して吠える観音かのんに、五月は、

「くあっくあっくあっ! これぞ<主人公補正>よ!」

だって。

実際、<主人公補正>ってのが働いてるんじゃないかってくらい、五月のサイコロ運は異常だったみたい。

モンスター相手に容赦なくクリティカルを連発し、絶体絶命のピンチすら、運だけでひっくり返してみせたそうだ。

サイコロは、観音かのんが用意したものだし、目の前で振ってるからインチキのしようもないんだけど、本当にとんでもない幸運の持ち主だった。

ただしそれは、あくまで、TRPGの中だけの話で、それ以外では別に普通みたいなんだよね。

真凛の方は普通だから負けることもよくありつつ、五月の運の良さに助けられてピンチを脱することもしばしば。

プレイヤーである五月達を迎え討つ観音かのんからすれば負けが込んでて、ぜんぜん上手くいってないみたいなもんなんだけど、でもその分、五月達を撃退できた時には、楽しくて仕方ないみたい。

こんな風に、観音かのんは、世の中が自分の思い通りにはいかないことを、ちゃんと分かってくれていた。

彼女が甘えたい時にはしっかりと甘えてもらうけど、でもそれと同時に、観音かのんは、何もかもが自分の思い通りに行くわけじゃないということを理解してくれているんだ。

そうだよね。実の母親に捨てられるなんて経験をしてる時点で、彼女の人生は、ちっとも彼女の思い通りにいってるわけじゃない。そしてその思い通りにいってないことを、父親であるダンナが支えてくれてたから、自分の思い通りにはいかないという事実を、彼女は受け止めることができるようになったんだと思う。

『我慢が大事』とかよく言われるけど、でも、我慢ができるというのは、

<我慢ができるだけの精神的余裕>

があっての話だと、つくづく思わされるんだよね。

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