愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット花嫁、アリシアのブライダル狂騒曲

紫音、白百合2139-PBを評する

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「いらっしゃいませ。あ、秀青しゅうせいさん……!」

翌日、白百合2139-PB(千堂アリシア)は、これまで通りアンドゥで働いていて、ついそんな声を上げてしまった。

「え…!?」

いきなり親し気に声を掛けられてギョッとしたのは、茅島かやしま秀青だった。その彼の隣には、いつものごとくアリシア2234-LMNが付き従っている。

「秀青様。千堂アリシア様です」

アリシア2234-LMNが、白百合2139-PBからの通信で状況を把握し、告げる。

「…あ、なるほど……!」

秀青も、アリシアが<仕事>でそのボディを使って<パン屋の店員>をしていることを察し、

「まさかこんなところで会うとはね……」

苦笑いを浮かべた。

「はい。今はこちらで働かせていただいています♡」

アリシアの言葉にももう動じない。

『メイトギア課の商品開発の一環か……』

と思っただけだ。そんな彼にアリシアは、笑顔で、

「今日はどなたかへのお土産ですか?」

声を掛ける。秀青自身はあまり<食>に頓着がないことを知っているので、わざわざ自分からこういう専門店に寄ってパンを選ぶというのがまずないと判断したからだった。そしてそれは事実で、

「ああ、<先生>の娘さんとお孫さんがここのパンが好きだって言うから、おみやげにね」

素直に事情を話す。するとアリシアも、

「それはそれは、ありがとうございます♡」

満面の笑顔で返す。けれど、言いながらカウンターから出てきた彼女の動きを見た途端に、秀青が、

「ん? あれ? お前、その体、一般仕様じゃないな」

と口にする。つい印象がそのまま口に出てしまったものだった。秀青もロボットにはそれなりに詳しいがゆえに、動きの不自然さに気付いてしまったのだ。

「あ、やっぱり分かります? これ、マネキンとして発売されている<白百合>がベースの体なんですよ」

たまたま客足が途切れて秀青以外に誰もいなかったこともあって、そんな雑談に応じる。

「なるほど、マネキンね。道理でそんなモデルみたいな動きなわけだ」

秀青は白百合というメイトギアのことまではよく知らなかったが、マネキンとして売られているメイトギアがあるのは知っていた上に、『マネキンとしてのメイトギアはそういうものだ』というのも知っていたことで、すぐにピンときたようだ。

そうして他愛ない話をしながら秀青の買い物に対応したアリシアは、

「ありがとうございました♡」

言いつつ彼を見送った。そんな彼女を見ていた紫音しおんが、

「でも、なんかだいぶ、柔らかい印象になったよね」

白百合2139-PBとしてのアリシアを評したのだった。

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