愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット花嫁、アリシアのブライダル狂騒曲

アルビオン、その難しさ

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そうして、アルビオン社のメインフレームを成すAIとJAPAN-2ジャパンセカンド社のメインフレームを成すAIとが協議を行っている間、良純達も、ホテルの部屋で休みつつも今後に備えて協議を行っていた。

「やはり正攻法では難しいですね」

良純が発言すると、上司は、

「まあ、当然だろうな。我々だって同じ立場なら部外者にそこまで立ち入らせることはしない。だからこそ、彼らの作法に則り、信頼を勝ち得なければいけないということだ」

と応える。さらに、

「私もかつてアルビオンに駐在していたことがあったが、彼らはとにかく<自分達の流儀>に拘る。作法には特に厳しい。ありきたりな<ビジネスマナー>ではなく、アルビオン式の作法を重視するんだ。それは、他所の都市の人間からすれば前時代的で古臭いしきたりのようにも思えるかもしれないが、彼らにとっては自分達の根幹を成すものだから、疎かにする者を許さない。おかげで何度か退去を求められそうになったよ」

とも語った。

「た、大変ですね」

良純と同僚の<住良木すめらぎ>は苦笑いを浮かべつつ相槌を打つ。JAPAN-2ジャパンセカンドでは、日常的にそこまで<作法>に拘らなければいけないことはそれほどない。相手を敬う姿勢さえ見せていれば、細かい部分は大目に見てもらえるのが普通だった。とは言え、

『ところ変われば品変わる』

の例えもあるように、アルビオンのような考え方を今なお維持している者達は少なからずいるのだ。<ビジネス>というものはそういう者達を相手にする場でもある。

「しかし、退去を求められるって、何をしたんですか?」

住良木が尋ねると、上司は、

「いや、その時の取引先の担当者の知人の友人の娘さんの誕生日パーティーのドレスコードに引っ掛かったとか、別の取引先の担当者の息子さんの友人が飼っている犬にプレゼントしたドッグフードが好みに合わなかったとか、そんな感じなんだよ」

それこそ苦笑いを浮かべつつ頭を掻いて説明する。

「な、なんですかそれ!?」

「厳しい!」

住良木と良純が慄く。つまり自分達はこれからそういう者達を相手にしなければいけないのだと感じて。

これも、事前の準備がしっかりとできていればメイトギアを傍に配してその時その時にアドバイスしてもらえばいいものの、アルビオンでは警備用のそれ以外のロボットを連れて歩くというのは『エレガントではない』とされて見下されるというのが普通だった。

『ロボットの入れ知恵をあてにしている時点で教養が足りない』

とされるのだ。

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