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ロボット花嫁、アリシアのブライダル狂騒曲
友利良純、その生い立ち
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「アリシアさん、どうでしたか? お仕事の方は」
友利良純は穏やかな感じでそう問い掛けてきた。いかにも理性的で知的かつ爽やかな青年という彼からは、<戦災孤児>という印象はほとんどなかった。さすがに終戦から数十年が経っていることに加え、安藤家での暮らしが幸せだったからだろう。
ちなみに彼の両親は共に<戦術自衛軍>の軍人で、支援のために派遣された先の戦場で命を落としている。紫音の父である桃香の夫も同じ部隊に所属していて、こちらも同じ戦場で亡くなった。良純の両親と桃香の夫はそれこそ昔からの友人であり、お互いに、
『自分に何かあったら家族を頼む』
と願えるほどの間柄だった。しかし結果として双方ともに亡くなり、軍人ではなかった桃香が良純を引き取った形になる。
このような<家族>も、大戦終結後まだ半世紀も経っていない火星では珍しくない。JAPAN-2そのものは、第一次大戦や第二次大戦では攻撃を受け犠牲者も出たが、第三次大戦においては、危うかったことは何度もありつつも、外周部には損害を受けつつも、直接の戦場にはなっていなかったし民間人に犠牲者は少なかったものの、派遣されていた戦術自衛軍には二千名を超える戦死者も出ていたのだった。
とは言え、他の都市の軍に比べれば少ない方ではあったが。
いずれにせよ、戦術自衛軍に所属していて戦死した者達の遺族や傷痍軍人に対してはJAPAN-2からの手厚い支援があり、生活そのもので困ることはなかった。
家族を亡くした悲しみは別としても……
けれどその点でも、良純は恵まれていただろう。彼を引き取ってくれた桃香は、必ずしも器用とは言い難かったが人柄はとても誠実で、彼のことも実の我が子と変わらず接してくれた。
もっとも、それ自体が、愛する夫を亡くした悲しみとつらさを紛らわせるための<代償行動>という面もあったのも事実ではあるだろうか。
そう、新しい家族である良純を愛すことで埋め合わせようとしていたということだ。
一方、良純としても、親として自分を愛してくれる桃香と、父親がいない寂しさを自分で埋めようとしてか懐いてくる紫音に、少なからず依存していたというのもあった。
といった諸々の事情もあり、普通の家庭以上に強い結びつきがあっただろう。そして思春期を迎えて、元々実の兄妹ではないことを知っていたのもあって互いを意識し始めた良純と紫音ではあったものの、兄妹のようにして過ごした時期がともに気恥ずかしくもあり、なかなか本当の気持ちを表に出せないままに、良純はJAPAN-2のエレクトロニクス部サプライヤー課で勤務するようになって家を出ていた。しかし別々に暮らすようになっても数十年経っても気持ちが変わらなかったことで、遂に素直になったというのが経緯だった。
友利良純は穏やかな感じでそう問い掛けてきた。いかにも理性的で知的かつ爽やかな青年という彼からは、<戦災孤児>という印象はほとんどなかった。さすがに終戦から数十年が経っていることに加え、安藤家での暮らしが幸せだったからだろう。
ちなみに彼の両親は共に<戦術自衛軍>の軍人で、支援のために派遣された先の戦場で命を落としている。紫音の父である桃香の夫も同じ部隊に所属していて、こちらも同じ戦場で亡くなった。良純の両親と桃香の夫はそれこそ昔からの友人であり、お互いに、
『自分に何かあったら家族を頼む』
と願えるほどの間柄だった。しかし結果として双方ともに亡くなり、軍人ではなかった桃香が良純を引き取った形になる。
このような<家族>も、大戦終結後まだ半世紀も経っていない火星では珍しくない。JAPAN-2そのものは、第一次大戦や第二次大戦では攻撃を受け犠牲者も出たが、第三次大戦においては、危うかったことは何度もありつつも、外周部には損害を受けつつも、直接の戦場にはなっていなかったし民間人に犠牲者は少なかったものの、派遣されていた戦術自衛軍には二千名を超える戦死者も出ていたのだった。
とは言え、他の都市の軍に比べれば少ない方ではあったが。
いずれにせよ、戦術自衛軍に所属していて戦死した者達の遺族や傷痍軍人に対してはJAPAN-2からの手厚い支援があり、生活そのもので困ることはなかった。
家族を亡くした悲しみは別としても……
けれどその点でも、良純は恵まれていただろう。彼を引き取ってくれた桃香は、必ずしも器用とは言い難かったが人柄はとても誠実で、彼のことも実の我が子と変わらず接してくれた。
もっとも、それ自体が、愛する夫を亡くした悲しみとつらさを紛らわせるための<代償行動>という面もあったのも事実ではあるだろうか。
そう、新しい家族である良純を愛すことで埋め合わせようとしていたということだ。
一方、良純としても、親として自分を愛してくれる桃香と、父親がいない寂しさを自分で埋めようとしてか懐いてくる紫音に、少なからず依存していたというのもあった。
といった諸々の事情もあり、普通の家庭以上に強い結びつきがあっただろう。そして思春期を迎えて、元々実の兄妹ではないことを知っていたのもあって互いを意識し始めた良純と紫音ではあったものの、兄妹のようにして過ごした時期がともに気恥ずかしくもあり、なかなか本当の気持ちを表に出せないままに、良純はJAPAN-2のエレクトロニクス部サプライヤー課で勤務するようになって家を出ていた。しかし別々に暮らすようになっても数十年経っても気持ちが変わらなかったことで、遂に素直になったというのが経緯だった。
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