愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット花嫁、アリシアのブライダル狂騒曲

白百合2139-PB(仮)、不自然さを隠しきれない

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白百合2139-PB(仮)を一目でロボットだと見抜いたその若い女性客も、当然のごとくJAPAN-2ジャパンセカンドの職員ではあったものの、元々その女性客の感覚が鋭いというのもあったものの、それ以上に、白百合2139-PB(仮)の仕草自体に、

<いかにもロボットらしい不自然さ>

が見られたのが原因の一つだろう。先にも述べたとおり、

『動きが綺麗すぎる』

のだ。動きの一つ一つがとにかく最も合理的で最も効率的でまったく無駄がないのである。それこそ、<工業用ロボットの動き>を見ているかのように。

意識せずに動くとそうなってしまうのだ。

もちろんあくまで<モデルの動き>を再現しているだけなので、

『その動きが完璧すぎて生きた人間に思えない』

と言うべきか。

そしてこの後、四十人の客が訪れて、

「あれ? ロボット?」

的に口にしたのが十人。口にこそしなかったものの明らかに違和感を覚えている様子でちらちらと見ていたのが十七人。さらに表には出さなかったもののロボットだと気付いていたであろう者もいたはずなので、大半の客がロボットだと気付いたということだった。

顔の造形は従来品とは敢えて変えているために、顔だけでは分からないはずにも拘わらず。

ロボットであることを気付かれるだけなら別に問題ないものの、違和感を覚えられるというのでは、<幸せそうな花嫁>を演出するには好ましくないだろう。<違和感>というのは、それ自体は共感でも反感でもないのだから。

「隣で見ててもやっぱり浮いた感じはありますね」

閉店作業中、紫音しおんも正直な感想を述べる。補助としてメイトギアを店に出すのは珍しいことではないのでそれが店の評判に繋がるわけではないにしても、白百合2139-PB(仮)が目指す目標にははるかに遠いことが改めて確認された。

しかし、初日はあくまで現状確認を行うための第一段階でしかない。重要なのはこの先だ。

「ありがとうございます。おかげさまで貴重なデータが得られました」

千堂アリシアが丁寧に頭を下げると、

「こんばんは」

<準備中の札>が掛かったドアを開けて男性が入ってきた。スーツ姿の友利ともり良純りょうじゅんだった。

「良ちゃん♡」

紫音がそれこそ『どこから声を出しているのか?』という声を上げて、ぱあっと表情を明るくした。その様子がまた、見ている方が恥ずかしくなりそうなほどのデレデレぶりで。

「おかえりなさいませ。友利様」

アリシアも出迎えるものの、紫音のそれと比べるとやはり冷淡なようにさえ見えてしまうのだった。

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