愛しのアリシア

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
742 / 804
ロボット花嫁、アリシアのブライダル狂騒曲

エリナ・バーンズ、共感を目指す

しおりを挟む
「ということで、<幸せそうに見える花嫁>に必要なのは<共感>であると私は考えました。見ている方が共感できることが大事だと思うんです」

そのエリナの発言に、部下の一人が、

「それは確かにそうだと思いますけど、でも、『幸せそうな人を見るのはムカつく!』って感じる人もいますよね? そんな風に思わせる姿もやっぱり<幸せそうな姿>なんじゃないでしょうか?」

とも意見を述べる。するとエリナは、

「ええ、だから私は、それを<共感の裏返し>であると考えるんです。共感であれ反感であれ、関心そのものが励起されて初めて<幸せそうな姿>だと感じました。それを一切励起しない、心理的な影響を与えないものを<幸せそうな姿>だとは言えないんじゃないでしょうか? ただの<記号>に過ぎないのかもしれません。まったく注意を引き付けないただの記号。それでは意味がないんです」

改めて説明する。

彼女が気付いたことを、

『当たり前じゃん! なんでそんなことも分からないんだよ!』

と嘲る者もいるだろう。しかし、それは単なる<思い上がり>である。自分の考えや感じていることこそが『正しい』と『真理である』と思いたがっているだけに過ぎない。誰かの<当たり前>は他の誰かにとっては違うなどということは、それ自体がごくごく当たり前に存在しているではないか。

物事を論理的に理性的に捉えようというクセが染みついているエリナ達には、単純な<感情論>というものが必ずしも身近ではなかったのである。

感情そのものを論理的に理性的に捉えようとする傾向があるゆえに。

メイトギア課では、感情そのものを数値に置き換えるスキルが求められる。メイトギアに<人間らしさ>というか、

<人間から見て不気味に思われないようにする自然な振る舞い>

を再現するには、それを数値で表せることが必要なのだ。ロボットには<心>がない。<心>を再現できるだけの膨大なリソースは用意できない。そんな途方もないAIを、人間サイズの機体に搭載するなど現実的ではない。そんなことをしていては<商品>として成立しない。

あくまでも現在の一般的な性能のAIで再現できる<人間らしさ>こそが要求されるのだ。千堂アリシアは<心(のようなもの)>を備えているとはいえ、実はそれがなぜ成立しているのかいまだに判明していない上に、そちらにリソースを割かれているがゆえに千堂アリシアは本来の性能を発揮できていない。

何度も言うように、それでは<商品>として成立しないのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

不遇職「罠師」は器用さMAXで無双する

ゆる弥
SF
後輩に勧められて買ってみたVRMMOゲーム、UnknownWorldOnline(通称UWO(ウォー))で通常では選ぶことができないレア職を狙って職業選択でランダムを選択する。 すると、不遇職とされる「罠師」になってしまう。 しかし、探索中足を滑らせて落ちた谷底で宝を発見する。 その宝は器用さをMAXにするバングルであった。 器用さに左右される罠作成を成功させまくってあらゆる罠を作り、モンスターを狩りまくって無双する。 やがて伝説のプレイヤーになる。

猫スタ募集中!(=^・・^=)

五十鈴りく
ライト文芸
僕には動物と話せるという特技がある。この特技をいかして、猫カフェをオープンすることにした。というわけで、一緒に働いてくれる猫スタッフを募集すると、噂を聞きつけた猫たちが僕のもとにやってくる。僕はそんな猫たちからここへ来た経緯を聞くのだけれど―― ※小説家になろう様にも掲載させて頂いております。

リサシテイション

根田カンダ
SF
画期的なゲーム機が全世界で同時発売された。 そのゲーム機《シマー》のプレイヤー達は、現実とバーチャルの間で、命を考えさせられる事になる。

終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり
SF
俺は令嬢もののラノベや漫画が好きだ。 だって女の子可愛い。 男だって女性向けが好きなんだ、めっちゃ読む。 そんな俺が今イチハマっていた『救国聖女は浮気王子に捨てられる〜私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした〜』。 そして気づいたら、俺はその聖女を捨てて国を破滅させる王子に転生していた!? 嫌だ、死にたくない! 俺は絶対浮気しないし、聖女を捨てたりしない! 一生大切にするので俺と幸せになってください! 小説家になろうに読み直しナッシング書き溜め。 ※恋愛ジャンルにするには、恋愛要素が足りない気がするしロボット大戦までの道のりは遠いけどゆっくりロボみが強くなるのでSFカテゴリにした。 ※なろう版にはあとがきで小ネタを裏設定をいっぱい書いてあります。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

銀色の雲

火曜日の風
SF
西暦207x年。太平洋上空に浮かぶ浮遊都市『リュボフ』 表向きは異星人の住む居住区となっている。そこに住む一人の青年は、その国の国王ある。しかし、国民は3人しかいなかった。 「そうだ、移民を受け入れよう。もちろん猫耳の・・・」そう考えた彼は、銀河系最速最強のAIを引き連れ、旅立つのであった。 名も無き一つの惑星に着いた彼は、その惑星を狙う怪しい一団を見つける。ここで原住民を巻き込んだ、戦いが始まる? ★『地球から追放されたけど、お土産付きで帰ってきます。』の続編となります。 人物背景等は、前作を読んでいただくと分りやすいと思います。作者ページの登録作品へ ※なろう転載、タイトル変更しております。

魔法刑事たちの事件簿R(リターンズ)

アンジェロ岩井
SF
魔法という概念が、一般的に使われるようになって何年が経過したのだろうか。 まず、魔法という概念が発見されたのは、西暦2199年の十二月一日の事だった。たまたま、古よりの魔術の本を解読していたヤン・ウィルソンが、ふと本に書いてある本に載っている魔法をつぶやいてみたところ、何と目の前の自分の机が燃え始めのだ。 慌てて火を消すうちにウィルソンは近くに載っていた火消しの魔法を唱えると、その炎は消化器を吹きかけられた時のように消したんだのだ。 ウィルソンはすぐに魔法の事を学会に発表し、魔法は現実のものだという事を発表したのだった。 ただに魔法の解読が進められ、様々な魔法を人は体に秘めている事が発見された。 その後の論文では、人は誰しも必ず空を飛ぶ魔法は使え、あとはその人個人の魔法を使えるのだと。 だが、稀に三つも四つも使える特異な魔法を使える人も出るらしい。 魔法を人の体から取り出す魔法検出器(マジック・ディセイター)が開発され、その後は誰しも魔法を使えるようになった。 だが、いつの世にも悪人は出る。例え法律が完全に施行された後でも……。 西暦2332年の日本共和国。 その首都のビッグ・トーキョーの一角に存在する白籠市。 この街は今や、修羅の混じる『魑魅魍魎の都市』と化していた。 その理由は世界有数の警備会社トマホーク・コープと東海林会の癒着が原因であった。 警察や他の行政組織とも手を組んでおり、街の人々は不安と恐怖に苛まれ、暮らしていた。 そんな彼らの不安を拭い去るべく、彼らに立ち向かったのは4人の勇気ある警官たちであった。 彼らはかつてこの白籠市が一つのヤクザ組織に支配されていた時に街を救った警官たちであり、その彼らの活躍を街の人々は忘れてはいなかった。 ここに始まるのは新たな『魔法刑事たち』の『物語』

処理中です...