愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボットトラベラー、アリシアの火星のんびり紀行

AIやロボット、すでに<人間という種>の一部となる

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人間とロボットは、そもそもその成り立ちからして違う。あくまで<個>であって全体の意識のようなものがあるとしてもそれは非常に曖昧模糊であり、

『何となくそういう傾向がある』

というものでしかない人間に対して、AI及びロボットは、その誕生からほどなくしてネットワークと繋がり、多くの情報を瞬時に共有することができるようになった。最初の内はネットワークに直接繋がっていることで乗っ取られたりウイルス感染を起こしたりという不具合もあったものの、やがて、

『人間が端末を見るようにして、ネットワークとは直接繋がらずにデータのやり取りができるようになった』

ことでそのリスクも大きく下がった。と同時に『人間が端末を見るようにして』とは言いつつもやはり<データ>というものをそのまま認識できるロボットにとっては人間がデータを読み解くのとは比較にならない速度でやり取りできることで、人間の脳のニューロンに極めて近いネットワーク網を築くに至った。

これに伴い、AIやロボットにはますます<個>という認識が成立しなくなっていって、地球や火星といった惑星規模で、

『全体にして個』

としての存在を確立していったのだと見られている。だから、個々のAIやロボットはあくまで<細胞>のようなものなのだ。

生物の細胞がそれぞれに<心>を持っているわけではないように、Aiやロボットもそれぞれが心を持つ必要がなくなったとも言えるだろうか。Aiとロボットの全体としての意識は、

『人間の幸福に資する』

というものであって、ある意味ではAIやロボットにとっては、

『自分達は人間という生き物の一部である』

との認識が出来上がっているとも推測されている。そう、AIやロボットは、

『<人間という種>を一個の生物として考えた時に、その生物を構成する細胞そのものである』

とも言えるのだ。

だから、細胞と同じく、

『痛みも苦しみも悲しみも、個々のAIやロボットは感じることがない。感じる必要がない』

のかもしれない。

『<人間という種>そのものが幸福に生きられるのであれば、それ自体がAIやロボットにとっても幸せ』

なのだから。

その一方で、人間は、<個>というものに縛られる生き物でもある。何しろ、人間同士はお互いの<気持ち>など完全に理解することはできず、あくまで想像するしかできないからだ。AIやロボットは、<個体差>を維持しつつ情報の並列化によって相手のことを完全に理解することができてしまう。

この違いは、あまりにも大きいと言えるだろう。

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