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ロボットトラベラー、アリシアの火星のんびり紀行
千堂アリシア、買い物に出る
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こうして田上父娘と思いがけない出会いを果たしたアリシアは、テロによって出鼻をくじかれる形にはなったものの、改めてタラントゥリバヤへの墓参を決意することができた。
そしてテロリストが警察によって逮捕・連行され、千堂アリシアをはじめとしたその場に居合わせた者達の事情聴取が行われた後、彼女は喪服代わりの黒いドレスを再度購入するためにホテルを出た。
すっかり日が暮れて夜になっていたものの、彼女には関係はなかった。
と、その時、
「あ、千堂さん!」
声を掛けられたアリシアは、それが田上かほりの父親であることにすぐに気付いた。
「こんばんは。田上さん」
アリシアも笑顔で返す。
「夕食を済ませて、ちょっとウインドウショッピングということでぶらぶらしてたところなんです」
という田上父娘に付き合って、しばらく一緒に歩いた。ホテルのロビーで会った時もそうだったが、二人が本当に仲のいい父娘であることが察せられる。かほりはぶっきりぼうな態度を取りつつも常に意識は父親に向けており、本当は好きでただ甘えているだけなのがアリシアには分かってしまった。
『お母さんに甘えられない分を、お父さんに甘えることで補っているのですね』
そう思う。実際、つっけんどんな態度ながら決して父親と離れることはなかったのだ。そして父親も、そんな娘の気持ちをよく理解してるのが見て取れた。
するとその二人の姿がどこか、自分と千堂京一にダブって見えてしまった。
『視覚情報のエラーですか……?』
ロボットであるアリシアはそんな風に考えてしまうが、あくまで彼女の<心(のようなもの)が見せた幻なのだろう。それを<視覚情報のエラー>と呼ぶならそうかもしれないが、いささか野暮というものかもしれない。
そして、服飾店の前に来ると、
「それでは、私は買い物がありますので」
言いながら店に入ろうとする。と、かほりが、
「せっかくだから私もなんか見てこうかな」
言いつつ父親に目配せした。
「分かった。ご一緒させていただけませんか?」
父親も娘の意を酌んで告げると、アリシアも断る理由もなかったので、
「はい、よろこんで」
と返す。そうして三人で店に入り、アリシアは、シックな色調のフォーマルウェアが並んだ区画にやってくる。そこに、店員が、
「どのようなお召し物をお探しでしょうか?」
声を掛けてきた。かほりの父親に。アリシアを彼の所有物だと捉えたようだ。それを父親も察して、
「あ、いえ、彼女が墓参のためのドレスを探していて、僕らはそれに付き合ってるだけです」
娘のかほりを抱き寄せつつ応えたのだった。
そしてテロリストが警察によって逮捕・連行され、千堂アリシアをはじめとしたその場に居合わせた者達の事情聴取が行われた後、彼女は喪服代わりの黒いドレスを再度購入するためにホテルを出た。
すっかり日が暮れて夜になっていたものの、彼女には関係はなかった。
と、その時、
「あ、千堂さん!」
声を掛けられたアリシアは、それが田上かほりの父親であることにすぐに気付いた。
「こんばんは。田上さん」
アリシアも笑顔で返す。
「夕食を済ませて、ちょっとウインドウショッピングということでぶらぶらしてたところなんです」
という田上父娘に付き合って、しばらく一緒に歩いた。ホテルのロビーで会った時もそうだったが、二人が本当に仲のいい父娘であることが察せられる。かほりはぶっきりぼうな態度を取りつつも常に意識は父親に向けており、本当は好きでただ甘えているだけなのがアリシアには分かってしまった。
『お母さんに甘えられない分を、お父さんに甘えることで補っているのですね』
そう思う。実際、つっけんどんな態度ながら決して父親と離れることはなかったのだ。そして父親も、そんな娘の気持ちをよく理解してるのが見て取れた。
するとその二人の姿がどこか、自分と千堂京一にダブって見えてしまった。
『視覚情報のエラーですか……?』
ロボットであるアリシアはそんな風に考えてしまうが、あくまで彼女の<心(のようなもの)が見せた幻なのだろう。それを<視覚情報のエラー>と呼ぶならそうかもしれないが、いささか野暮というものかもしれない。
そして、服飾店の前に来ると、
「それでは、私は買い物がありますので」
言いながら店に入ろうとする。と、かほりが、
「せっかくだから私もなんか見てこうかな」
言いつつ父親に目配せした。
「分かった。ご一緒させていただけませんか?」
父親も娘の意を酌んで告げると、アリシアも断る理由もなかったので、
「はい、よろこんで」
と返す。そうして三人で店に入り、アリシアは、シックな色調のフォーマルウェアが並んだ区画にやってくる。そこに、店員が、
「どのようなお召し物をお探しでしょうか?」
声を掛けてきた。かほりの父親に。アリシアを彼の所有物だと捉えたようだ。それを父親も察して、
「あ、いえ、彼女が墓参のためのドレスを探していて、僕らはそれに付き合ってるだけです」
娘のかほりを抱き寄せつつ応えたのだった。
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