700 / 804
ロボットトラベラー、アリシアの火星のんびり紀行
タラントゥリバヤについて、その調査結果
しおりを挟む
そうしてタラントゥリバヤについて調査を行ったものの、結局は断片的なものしか得られなかった。その一方で、彼女がここで確かに生きていたことだけは確認できた。
彼女の生家の周辺では、きっと、幼い彼女が近所の子供達と遊んでいたりもしたのだろう。その光景を思えば微笑ましくもある。
けれど、当時の彼女の同級生にも何人か話を聞こうとしたものの、誰一人、語ってはくれなかった。彼女の名前を出しただけで、
「帰ってくれ。テロリストについて話すことなど何もない!」
と、まるで台本でもあるかのように同じ文言で拒絶された。確かに語りたくもない内容ではあるだろうが、それ以上にこの地域の隠蔽体質は非常に根強いものであることも感じられた。
千堂アリシアは、そのことについては批判するつもりもない。彼女にとってはそれは問題ではない。人間にはそれぞれ価値観や考え方があり、すべての人間が同じ思考をするわけでないのはよく分かっている。
けれど、なぜか彼女を責める方向にだけは示し合わせたかのように歩調を合わせるのが不思議でもある。テロリストであることは事実でも、そうなる以前の彼女はごく普通の子供であったはずなのに。なぜか、
<生まれついてのテロリスト>
のような扱いをするのだ。宿角レティシア以外は。
アリシアはそれが悲しかった。彼女が生まれてきたことそのものが否定されているような気がして……
無論、タラントゥリバヤがしたテロ行為そのものは許されるものじゃない。許されていいものじゃない。ただ、許されないのは<テロ行為>であって、彼女の存在そのものではないとも思う。
だからアリシアは思うのだ。
『私だけは、彼女の存在を許したい……』
と。他の誰が許さなくても、自分だけは彼女の存在を認め、その上でやったことについては批判もしたいと考える。
タラントゥリバヤは、<クイーン・オブ・マーズ号事件>においては、直接、乗客を殺害していないことは分かっている。彼女はただひたすらメイトギアを破壊していただけだ。けれど同時に、
<ロボットと結婚した友人の殺害>
については、後の捜査で物証も出てきたとのことで事実とみられている。父親を包丁で刺した件とも合わせ、決して<無辜の者>ではない。ないが、彼女が生きていたという事実そのものをなかったことにする必要まではないのではないか?
彼女の一番の<罪>は、
『不幸な身の上を理由に他者を傷付けていい』
と考えてしまったことなのだろう、それさえなければ、まだ幸せを掴めた可能性はあったのかもしれない。考えが合わない友人とは縁を切って、まったく別の生き方をしていれば……
彼女の生家の周辺では、きっと、幼い彼女が近所の子供達と遊んでいたりもしたのだろう。その光景を思えば微笑ましくもある。
けれど、当時の彼女の同級生にも何人か話を聞こうとしたものの、誰一人、語ってはくれなかった。彼女の名前を出しただけで、
「帰ってくれ。テロリストについて話すことなど何もない!」
と、まるで台本でもあるかのように同じ文言で拒絶された。確かに語りたくもない内容ではあるだろうが、それ以上にこの地域の隠蔽体質は非常に根強いものであることも感じられた。
千堂アリシアは、そのことについては批判するつもりもない。彼女にとってはそれは問題ではない。人間にはそれぞれ価値観や考え方があり、すべての人間が同じ思考をするわけでないのはよく分かっている。
けれど、なぜか彼女を責める方向にだけは示し合わせたかのように歩調を合わせるのが不思議でもある。テロリストであることは事実でも、そうなる以前の彼女はごく普通の子供であったはずなのに。なぜか、
<生まれついてのテロリスト>
のような扱いをするのだ。宿角レティシア以外は。
アリシアはそれが悲しかった。彼女が生まれてきたことそのものが否定されているような気がして……
無論、タラントゥリバヤがしたテロ行為そのものは許されるものじゃない。許されていいものじゃない。ただ、許されないのは<テロ行為>であって、彼女の存在そのものではないとも思う。
だからアリシアは思うのだ。
『私だけは、彼女の存在を許したい……』
と。他の誰が許さなくても、自分だけは彼女の存在を認め、その上でやったことについては批判もしたいと考える。
タラントゥリバヤは、<クイーン・オブ・マーズ号事件>においては、直接、乗客を殺害していないことは分かっている。彼女はただひたすらメイトギアを破壊していただけだ。けれど同時に、
<ロボットと結婚した友人の殺害>
については、後の捜査で物証も出てきたとのことで事実とみられている。父親を包丁で刺した件とも合わせ、決して<無辜の者>ではない。ないが、彼女が生きていたという事実そのものをなかったことにする必要まではないのではないか?
彼女の一番の<罪>は、
『不幸な身の上を理由に他者を傷付けていい』
と考えてしまったことなのだろう、それさえなければ、まだ幸せを掴めた可能性はあったのかもしれない。考えが合わない友人とは縁を切って、まったく別の生き方をしていれば……
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話
東岡忠良
青春
二卵性双生児の兄妹、新屋敷竜馬(しんやしきりょうま)と和葉(かずは)は、元女子高の如月(きさらぎ)学園高校へ通うことになった。
今年から共学となったのである。
そこは竜馬が想像していた以上に男子が少なかった。
妹の和葉は学年一位の成績のGカップ美少女だが、思春期のせいか、女性のおっぱいの大きさが気になって仕方がなく、兄竜馬の『おちんちん』も気になって仕方がない。
スポーツ科には新屋敷兄弟と幼稚園からの幼馴染で、長身スポーツ万能Fカップのボーイッシュ少女の三上小夏(みかみこなつ)。
同級生には学年二位でHカップを隠したグラビアアイドル級美人の相生優子(あいおいゆうこ)。
中学からの知り合いの小柄なIカップロリ巨乳の瀬川薫(せがわかおる)。
そして小柄な美少年男子の園田春樹(そのだはるき)。
竜馬の学園生活は、彼らによって刺激的な毎日が待っていた。
新屋敷兄妹中心に繰り広げられる学園コメディーです。
それと『お気に入り』を押して頂けたら、とても励みになります。
よろしくお願い致します。
アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)
愛山雄町
SF
ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め!
■■■
人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。
■■■
宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。
アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。
4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。
その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。
彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。
■■■
小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。
■■■
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
後天スキル【ブラックスミス】で最強無双⁈~魔砲使いは今日も機械魔を屠り続ける~
華音 楓
SF
7歳で受けた職業診断によって憧れの狩猟者になれず、リヒテルは失望の淵に立たされていた。
しかし、その冒険心は消えず、立入禁止区域に足を踏み入れ、そこに巣食う機械魔に襲われ、命の危機に晒される。
すると一人の中年男性が颯爽と現れ、魔砲と呼ばれる銃火器を使い、全ての機械魔を駆逐していった。
その姿にあこがれたリヒテルは、男に弟子入りを志願するが、取り合ってもらえない。
しかし、それでも諦められず、それからの日々を修行に明け暮れたのだった。
それから8年後、リヒテルはついに憧れの狩猟者となり、後天的に得た「ブラックスミス」のスキルを駆使し、魔砲を武器にして機械魔と戦い続ける。
《この物語は、スチームパンクの世界観を背景に、リヒテルが機械魔を次々と倒しながら、成長してい物語です》
※お願い
前作、【最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~】からの続編となります
より内容を楽しみたい方は、前作を一度読んでいただければ幸いです
♡してLv.Up【MR無責任種付おじさん】の加護を授かった僕は実家を追放されて無双する!戻ってこいと言われてももう遅い!
黒須
ファンタジー
これは真面目な物語です。
この世界の人間は十二歳になると誰もが天より加護を授かる。加護には様々なクラスやレアリティがあり、どの加護が発現するかは〈加護の儀〉という儀式を受けてみなければわからない。
リンダナ侯爵家嫡男の主人公も十二歳になり〈加護の儀〉を受ける。
そこで授かったのは【MR無責任種付おじさん】という加護だった。
加護のせいで実家を追放された主人公は、デーモンの加護を持つ少女と二人で冒険者になり、金を貯めて風俗店に通う日々をおくる。
そんなある日、勇者が魔王討伐に失敗する。
追い込まれた魔王は全世界に向けて最悪の大呪魔法(だいじゅまほう)ED(イーディー)を放った。
そして人類は子孫を残せなくなる。
あの男以外は!
これは【MR無責任種付おじさん】という加護を授かった男が世界を救う物語である。
異星人が見た異世界転生記(我輩はゴアである・改)
雲黒斎草菜
SF
「ある日、我輩は雷に打たれて墜落。立ち入り禁止の星域に近づいた報いなのか、着いたところはなにやら怪しげな世界。そこはかとなく怪奇でありながら甘美であった……」で始まった内容が、二巻あたりから超危険なやり取りに変貌していきます。こうなったら掲載停止処置も覚悟の上です。そんなドタバタ日常SFコメディーでありながら、すごくITでもある物語です。
ちなみに、パソコンや電子回路を専攻している方がお読みになると「プフッ」と笑うかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる