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ロボットトラベラー、アリシアの火星のんびり紀行
旧式なロボットと現在のロボット、その差異
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クラヒは、客とのやり取りには、アリシアを同席させなかった。余計な口出しをさせないためである。クラヒが明らかに<虚偽の事実>を提示したり、相手の無知に付け込んで不良品を売りつけようとしたら、アリシアはロボットとして黙っていられない。クラヒはそれをよく理解してるからだ。
以前、彼が所有していたレイバーギアは彼が設定をいじったことで干渉してこなかったものの、アリシアシリーズについては、そのような悪意を持ったカスタマイズはそもそも行えないようになっている。これはアリシアシリーズに限ったことでなく、第三次火星大戦以降に作られたロボットは基本的にそうなのだ。
クラヒのレイバーギアも、マイナーチェンジでそういう対応ができるようにされていたものの、そもそものシステムが旧式なので、後付けの補助パーツで無理矢理対応させているだけでしかなかった。そこに付け入る隙がある。しかしアリシアシリーズにはそれがない。そもそものメインフレームの仕様が、現在の基準に沿って作られているからだ。そこに素人が干渉できる余地はないし、それを勝手に改変すれば<テロ準備罪>で逮捕されることさえある。
ロボットの『法を犯さない』という部分を書き換えるということは、それはつまり、
<法に触れる運用をするために行うもの>
以外の何ものでもないわけで。そしてロボットを使って行う<法に触れる行為>など、社会に対して大きな損害を与えるもの以外にない。小規模な詐欺ならロボットを同席させなければできてしまう。クラヒがそうしているように。
ただしこれも、ここカルクラにおいては、
『騙される方が悪い』
がまかり通ってしまうので、騙す方に罪の意識はほとんどない。
アリシアも、クラヒが法に抵触するような商売を行っているのは察しているがゆえに、
「クラヒさん! そういうのはよくないと思います!」
と噛み付くものの、
「あ~あ~、聞こえな~い!」
などととぼけられてしまうとそれ以上は食い下がれなかった。物証がないからである。ロボットだからこそ、当て推量で断定的には振る舞えないというのもあるのだ。人間は、確証などなくとも勝手な思い込みで相手を責め立てることもできてしまうが、ロボットにそれはできない。
それでも、アリシアとの暮らし自体、クラヒ自身にとっても満更でもなかったようだ。仕事の後には、アリシアに酌をしてもらって楽し気に酒を飲むことが多くなった。
ムスリムでは飲酒は厳しく制限されている場合もあるが、先にも述べた通りクラヒは<敬虔なムスリム>ではないからである。
だがそれを差し引いても、クラヒが楽しそうなのは事実であっただろう。
以前、彼が所有していたレイバーギアは彼が設定をいじったことで干渉してこなかったものの、アリシアシリーズについては、そのような悪意を持ったカスタマイズはそもそも行えないようになっている。これはアリシアシリーズに限ったことでなく、第三次火星大戦以降に作られたロボットは基本的にそうなのだ。
クラヒのレイバーギアも、マイナーチェンジでそういう対応ができるようにされていたものの、そもそものシステムが旧式なので、後付けの補助パーツで無理矢理対応させているだけでしかなかった。そこに付け入る隙がある。しかしアリシアシリーズにはそれがない。そもそものメインフレームの仕様が、現在の基準に沿って作られているからだ。そこに素人が干渉できる余地はないし、それを勝手に改変すれば<テロ準備罪>で逮捕されることさえある。
ロボットの『法を犯さない』という部分を書き換えるということは、それはつまり、
<法に触れる運用をするために行うもの>
以外の何ものでもないわけで。そしてロボットを使って行う<法に触れる行為>など、社会に対して大きな損害を与えるもの以外にない。小規模な詐欺ならロボットを同席させなければできてしまう。クラヒがそうしているように。
ただしこれも、ここカルクラにおいては、
『騙される方が悪い』
がまかり通ってしまうので、騙す方に罪の意識はほとんどない。
アリシアも、クラヒが法に抵触するような商売を行っているのは察しているがゆえに、
「クラヒさん! そういうのはよくないと思います!」
と噛み付くものの、
「あ~あ~、聞こえな~い!」
などととぼけられてしまうとそれ以上は食い下がれなかった。物証がないからである。ロボットだからこそ、当て推量で断定的には振る舞えないというのもあるのだ。人間は、確証などなくとも勝手な思い込みで相手を責め立てることもできてしまうが、ロボットにそれはできない。
それでも、アリシアとの暮らし自体、クラヒ自身にとっても満更でもなかったようだ。仕事の後には、アリシアに酌をしてもらって楽し気に酒を飲むことが多くなった。
ムスリムでは飲酒は厳しく制限されている場合もあるが、先にも述べた通りクラヒは<敬虔なムスリム>ではないからである。
だがそれを差し引いても、クラヒが楽しそうなのは事実であっただろう。
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