愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボットトラベラー、アリシアの火星のんびり紀行

現在のロボット、その機能と役割

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人間が家出少女を保護している場合と、ロボットがそれを保護している場合とでは当然、対処が変わってくる。ましてや、きっちりと正規品である証明書も確認できるロボットであれば、むしろ任せておく方が確実なのだ。何しろ、場合によっては警察がロボットを遠隔操作することさえ、持ち主の承諾は必要になるものの可能なのだから。

『持ち主の承諾があれば一時的に<警察用のロボット>として運用できる』

ということだ。

一方、人間が保護してる場合は、どのような者であるのか身分が確認できたとしても<公的な身分証>が当人の人間性までは担保してくれないがゆえに、早々に警察の方で保護する必要が出てくる。

加えて、警察の方で保護しないと、家出人の家族が『誘拐だ!』と騒ぎ出すこともある。こうなると善意で保護している者があらぬ疑いを掛けられて迷惑を被る可能性も出てくる。

けれどロボットの場合は、

『ロボットに家出少女を保護させて、その上で持ち主が良からぬことを』

ということもそもそもできないのだ。現在のロボットは、たとえ主人の命令であっても不法行為に加担することはない。それをすれば主人が犯罪者となるからだ。ロボットは主人を『守る』。それは、

『主人を犯罪者にしてしまわないことによって守る』

という意味でもある。

命の危険もあるような状況であれば千堂アリシアも千堂京一せんどうけいいちに相談して対処を行うが、標準的なロボットとしての機能の範囲内で<家出人の保護>を行っている程度なら、事後報告でも問題ないのである。

けれど、少女はそんな事情などまったく知る由もなく、すやすやと眠っている。するとアリシアは、少女の体にそっとシーツを掛けた。部屋は適温に保たれているものの、念のためにだ。

その上で、体温や脈拍や呼吸等のごく一部のバイタルサインによって体調に異変がないことは確認する。本人に承諾を取り体に触れればもっと詳細に確かめられるが、現状で分かる範囲で問題は見れらないのでそこまではしない。

なお、今のこの体の持ち主である根岸ねぎし右琉澄うるずには、メッセージという形で概要を通知し、

『任せる』

という承諾はもらっている。これによって警察をはじめとした関係各所との連携が取れているので、むしろ主人は余計なことをしない方が面倒が少なくて済むのだ。下手に何かしようとすると痛くもない腹を探られることさえある。

実際、同様に行方不明者を保護したロボットの持ち主が、ロボット内のデータを処理しようと手配してその行動を怪しまれ、まったく別の犯罪(この時は窃盗)が暴かれたという事例もある。

自身の行動データがロボット(メイトギア)の中に残っているのではないかと心配して普通はしない操作をしているのが、行方不明者の保護のためにリンクしていた警察側から見えてしまったというお粗末なものであった。

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