愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌

アリシア2234-LMN、秀青に付き添う

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なお、こうして秀青しゅうせい結愛ゆなが<祭>に顔を出している間、千堂アリシアは間倉井まくらい診療所での業務を終え、千堂京一せんどうけいいちと共に帰宅の途に就いていた。

明帆野あけぼのでの祭のことは聞いていたものの、千堂と一緒に行けないのなら意味がないので、彼と共に自宅で寛ぐ方を選んだ。

一方、秀青は焼きトウモロコシだけを買い、それを口にしながら屋台を見て回るだけだった。さすがに金魚すくいや射的などを一人で楽しむには年齢が高いからだ。これが親しい友人なども一緒であれば、その場の<ノリ>で楽しむこともできたのかもしれないが、連れているのが冷たい表情をしているだけのアリシア2234-LMNでは、さすがに盛り上がらない。

『千堂さんとこのアリシアとだったら、楽しいんだろうけどな……』

そんなことも思う。もっとも、だからと言って自分のアリシア2234-LMNを、本来の設定に戻すつもりもない。戻したところで、秀青のアリシア2234-LMNは千堂アリシアとは同じにはならない。それも分かっているからだ。

しかもアリシア2234-LMNを連れていると、明らかに不快そうな視線を向ける者達がいたことで、

『やっぱり、ロボットは好かれてないんだな……』

と思い、一通り巡っただけで、明帆野あけぼの荘へと帰るために歩き出した。

「もうよろしいのですか?」

アリシア2234-LMNに問い掛けられて、

「ああ、いいんだ。お前がいると迷惑する人もいるみたいだからな」

そう応える。言い方はあれだがロボットはそんなことは気にしないので、

「賢明な判断です」

とむしろ労わってくれる。さらに秀青は、

「ここでは僕達こそが余所者だ。ここはロボットから距離を置くことを望んでる人達の集落だからな。僕が遠慮するのが当然だよ。むしろ、バスに乗った時にあれこれ言われなかっただけ、ここの人達は親切だ。祭の会場でも我慢してくれてたんだと思う。だったらそれにいつまでも甘えるのも違うだろ?」

そう口にした。それに対してアリシア2234-LMNも、

「秀青様も、他の方を労わることのできる立派な人にお育ちになられました。お祖父様もきっとお喜びでしょう」

と告げる。でも、これについては秀青は、

「だけど僕は、お祖父様のことは好きになれないけどね」

とも、正直に打ち明けた。けれどアリシア2234-LMNは、

「はい。たとえ肉親であっても、それぞれが別の人間である以上は、すべての点で価値観が合致することはありません。好き嫌いもしかり。けれど今の秀青様は、ご自身の気持ちとは別にお祖父様を敬ってらっしゃいます。それでいいのだと私は考えます」

穏やかに応えたのだった。

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