愛しのアリシア

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
578 / 804
ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌

メイトギア特有の不自然さ、超えられない壁

しおりを挟む
間倉井まくらい医師の意識が戻らないことで、間倉井まくらい診療所では、朝倉病院を含む複数の病院の医師がローテーションを組んで、<遠隔医療>を行うことになった。

これについて、明帆野あけぼのの住人達は、

間倉井まくらい先生、大丈夫なのかねえ……」

「先生ももうお歳だからね……」

「手術は成功したって話だったけど……」

様々話し合っていた。診療所そのものはニーナと寛慈が入院しているだけで他には一日十人程度の患者が訪れる程度なので、それほど問題はない。

ただ、中には安吾と同じく<メイトギアアレルギー>が強い者もおり、そういう者は、医師が直接メイトギアを操作することで対処した。人間が専用の端末を用いて直接メイトギアを操れば仕草そのものも人間のそれとなり、

<メイトギア特有の不自然さ>

がほとんどなくなるため、平気になるのだ。いわば、

<全身義体の人間>

と変わりなくなるのである。だからやはり、人間とロボットは違うというのが分かる。

今よりさらに人間の仕草に近付けようとする試みも行われてはいるものの、<人間の仕草>というのは実は、

<非合理的で不合理で意味のない思考の揺らぎ>

がもたらしているものであるのは判明しており、それをAIで再現しようとすると、その、<非合理的で不合理で意味のない思考の揺らぎ>に大きなリソースが割かれてしまうために、パフォーマンスが大幅に低下してしまうことが分かっている。

これは、千堂アリシアのデータを分析したことでも得られたものだった。彼女は確かに人間としか思えない振る舞いをするが、その分、本来のアリシアシリーズよりもパフォーマンスが低下しており、今回の間倉井まくらい診療所でのそれも、実際には秀青しゅうせいのアリシア2234-LMN側のAIの補助があって実現していたパフォーマンスだった。

つまり、本来のパフォーマンスを発揮するには、メイトギア二体分の処理能力が求められるということなのだ。

これは、商品として採用するにはあまりにも非合理的であると、メーカー側としては判断するしかない。だから、千堂アリシアのそれを再現しようとするのは、それこそ、

『メイトギアショーに出展するために<未来のメイトギアのイメージモデル>としてワンオフで製造したものを、そのまま一般販売する』

ようなもので、メーカーとしては『割に合わない』のである。

なので、現状では、<メイトギアアレルギー>を持つ者に合わせて作ることは、現実的ではなかった。なので結局、人間の医師や看護師を派遣するか、人間が直接メイトギアのボディを操るかになるのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

憲法改正と自殺薬

会川 明
SF
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とはいっさい関係ありません。 憲法改正後の日本、国家による自殺薬の配布から十数年が経った。 斉藤寛と楠瀬ツキミは幼なじみだ。 二人は仲睦まじく育った。 しかし、二人の終わりは唐突にやって来る。

Shuffle Fantasy

顎(あご)
SF
SF系の短編集です。暇な時に更新していこうと思います。

僕と精霊〜The last magic〜

一般人
ファンタジー
 ジャン・バーン(17)と相棒の精霊カーバンクルのパンプ。2人の最後の戦いが今始まろうとしている。

攻撃と確率にステ振りしていたら最強になりました

りっくり
SF
〜あらすじ〜 ゲーム知識ゼロの日比谷悠斗(ヒビト)が友達の成瀬友哉(トモ)に誘われて、ゲーム《グレイド・リヴァー・オンライン》を始めることになったのだが、トモはお母さんの機嫌が悪いから今日はプレイできないと言い出します。 ヒビトは仕方なく一人でゲームをすると決心し、下調べをせずゲームプレイを行います。 ゲームを始めてすぐにヒビトは美人プレイヤー月城玲奈(ツキナ)に最初に出会い、いろいろな情報を教えてもらいながらプレイをすることになります。そしてツキナはヒビトを見たときから一目ぼれをしてしまったみたいで、リアル情報を教えて欲しいという無理なお願いを了承してくれます。 リアル情報をお互いに交換して、親睦を深めた二人はフィールドに行きレベ上げを行うことに……。

86,400秒 異世界冒険奇譚 ~JK勇者は一日の時間を衝動買い。 流れる時間をエネルギーに変え、今日もスキルをぶっ放す!~

北葉ポウ
ファンタジー
 ある日、突然勇者になった崖っぷち受験生な私。  不思議な運命に導かれ、愛猫カナタに会うため、異世界「ショルゼア」に転移した。  86400円でゲットしたのは一日分の無双時間。  この間なら、どんな魔法も能力もつくって真似して、一瞬で発動。コレ絶対、神スキル認定だわっ!  でも使い切ってしまったらなんか色々ヤバイらしい。  なんとなかるさ精神で、モフモフイケメン聖獣やキュートな癒し系魔獣と共に、邪竜を討つ勇者になるべく旅をする。  自らの意志で新しい世界をクリエイト――――。  そんな冒険奇譚が、今、始まる。

Beyond the soul 最強に挑む者たち

Keitetsu003
SF
 西暦2016年。  アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。  ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。  アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。  『アルカナ・ボンヤード』。  ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。  アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。  しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。  アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。  その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。  ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。  各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。 『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』  あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。 *お話の都合上、会話が長文になることがあります。  その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。   投稿日は不定期です

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

熱血豪傑ビッグバンダー!

ハリエンジュ
SF
時は地球人の宇宙進出が当たり前になった、今より遥か遠い未来。 舞台は第二の地球として人類が住みやすいように改良を加え、文明が発展した惑星『セカンドアース』。 しかし、二十数年前の最高権力者の暗殺をきっかけに、セカンドアースは地区間の争いが絶えず治安は絶望的なものとなっていました。 さらに、外界からの謎の侵略生物『アンノウン』の襲撃も始まって、セカンドアースは現在未曽有の危機に。 そこで政府は、セカンドアース内のカースト制度を明確にする為に、さらにはアンノウンに対抗する為に、アンノウン討伐も兼ねた人型ロボット『ビッグバンダー』を用いた代理戦争『バトル・ロボイヤル』を提案。 各地区から一人選出された代表パイロット『ファイター』が、機体整備や医療、ファイターのメンタルケア、身の回りの世話などの仕事を担う『サポーター』とペアを組んで共に参戦。 ファイターはビッグバンダーに搭乗し、ビッグバンダー同士で戦い、最後に勝ち残ったビッグバンダーを擁する地区がセカンドアースの全ての権力を握る、と言ったルールの下、それぞれの地区は戦うことになりました。 主人公・バッカス=リュボフはスラム街の比率が多い荒れた第13地区の代表ファイターである29歳メタボ体型の陽気で大らかなドルオタ青年。 『宇宙中の人が好きなだけ美味しいごはんを食べられる世界を作ること』を夢見るバッカスは幼馴染のシーメールなサポーター・ピアス=トゥインクルと共に、ファイター・サポーターが集まる『カーバンクル寮』での生活を通し、様々なライバルとの出会いを経験しながら、美味しいごはんを沢山食べたり推してるアイドルに夢中になったりしつつ、戦いに身を投じていくのでした。 『熱血豪傑ビッグバンダー!』はファイターとサポーターの絆を描いたゆるふわ熱血ロボットSF(すこしふぁんたじー)アクション恋愛ドラマです。

処理中です...