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ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌
四時三十五分、新しい命を迎える
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<クリステレル胎児圧出法>はリスクの高いものであるため、安易には使えない。しかし世の中にはまるで魔法のように撫でるがごとく触れるだけで赤ん坊を押し出してみせる医師もいた。その技術も詳細に分析され、百パーセントとは言わないもののかなりの精度で再現できるだけのデータを得られていた。今回、それが役に立った。
胎児の頭を吸引し吸い出すという方法もあるのだが、今回は敢えて<クリステレル胎児圧出法>を選んだ。それは、間倉井医師がアリシアに何かを感じ取っていたからかもしれない。
普通のロボットはそれこそ機械的に事務的に作業をこなすだけである。なので、
『何か多少の問題があってもその後改めて対処すればいい』
と、リスクについても機械的にただの事象としか捉えない面があるのだ。リスクも含めてそう設定されているがゆえに。けれど、<心(のようなもの)>を持つアリシアはそんな風には割り切れない。割り切れないから、普通のロボットが効率を重視してやらない手間をかけるのだ。
今回も、ただの数値では割り切れない(あくまでこの時点の技術では算出できないという意味での)部分を、アリシアは敢えて対処しようとした。それが、
『母体にも胎児にも負担をかけ過ぎないクリステレル胎児圧出法の施術』
をもたらすこととなった。それを間倉井医師は見抜いたのかもしれない。
いずれにせよ、
「四時三十五分。無事出産です。元気な男の子ですよ♡」
分娩室に入ってから実に十一時間弱。ようやく迎えることができた我が子に、
「ああ……ああ……」
ニーナは言葉が詰まって何とも言えなくなっていた。アリシアがそっと胸に置いてくれた、「みゃあ、みゃあ」とまるでネコのような泣き声を上げる我が子を、ボロボロと涙を流しながら見つめ、包み込むように抱き締める。
「頑張った…! よく頑張ったな……!!」
安吾も目を潤ませてニーナを労った。
そんな二人を、アリシアも嬉しそうに微笑みながら見ている。
そしてそんなアリシアを、
「まったくおかしなロボットだよ……」
間倉井医師もそう呟きながらタブレット越しに見ていたのだった。
こうして、辻堂ニーナと安吾の長男は無事に二人の下にやってきてくれて、
<寛慈>と名付けられることとなった。
『ゆったりとした心と慈しみを持った人に育ってほしい』
という願いが込められた名だった。
なお、秀青と立志については、安吾と入れ替わるようにして間倉井診療所を後にして、明帆野荘へと帰っていたのだった。
いろいろ気にはなるものの、いても何もできないからである。
胎児の頭を吸引し吸い出すという方法もあるのだが、今回は敢えて<クリステレル胎児圧出法>を選んだ。それは、間倉井医師がアリシアに何かを感じ取っていたからかもしれない。
普通のロボットはそれこそ機械的に事務的に作業をこなすだけである。なので、
『何か多少の問題があってもその後改めて対処すればいい』
と、リスクについても機械的にただの事象としか捉えない面があるのだ。リスクも含めてそう設定されているがゆえに。けれど、<心(のようなもの)>を持つアリシアはそんな風には割り切れない。割り切れないから、普通のロボットが効率を重視してやらない手間をかけるのだ。
今回も、ただの数値では割り切れない(あくまでこの時点の技術では算出できないという意味での)部分を、アリシアは敢えて対処しようとした。それが、
『母体にも胎児にも負担をかけ過ぎないクリステレル胎児圧出法の施術』
をもたらすこととなった。それを間倉井医師は見抜いたのかもしれない。
いずれにせよ、
「四時三十五分。無事出産です。元気な男の子ですよ♡」
分娩室に入ってから実に十一時間弱。ようやく迎えることができた我が子に、
「ああ……ああ……」
ニーナは言葉が詰まって何とも言えなくなっていた。アリシアがそっと胸に置いてくれた、「みゃあ、みゃあ」とまるでネコのような泣き声を上げる我が子を、ボロボロと涙を流しながら見つめ、包み込むように抱き締める。
「頑張った…! よく頑張ったな……!!」
安吾も目を潤ませてニーナを労った。
そんな二人を、アリシアも嬉しそうに微笑みながら見ている。
そしてそんなアリシアを、
「まったくおかしなロボットだよ……」
間倉井医師もそう呟きながらタブレット越しに見ていたのだった。
こうして、辻堂ニーナと安吾の長男は無事に二人の下にやってきてくれて、
<寛慈>と名付けられることとなった。
『ゆったりとした心と慈しみを持った人に育ってほしい』
という願いが込められた名だった。
なお、秀青と立志については、安吾と入れ替わるようにして間倉井診療所を後にして、明帆野荘へと帰っていたのだった。
いろいろ気にはなるものの、いても何もできないからである。
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