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ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌
藤田医師、極める
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『少なくとも私は、あと百二十年も生きるのはちょっと御免被りたいね……』
そう思いつつ、でもやはり心のどこかでは『死にたくない』とも思っている。これが<人間>というものだろう。人間の思考には必ず矛盾がある。むしろ矛盾がなければおかしい。それは咎められるべきものではない。
ゆえに藤田医師は、間倉井医師の『死にたくない』という願いに応えようと自らにできる最大限を発揮しようとする。
心臓の鼓動に合わせてかすかに脈動する血管をものともせず、人工血管を繋ぎ合わせていく。機械のように精密に、けれど、マイクロ単位で見れば必ず完全に常に同じそれをするわけじゃない血管の動きを感じ取り、一回一回微調整しながら縫合していく、医療用ロボットは、そんな人間の医師の繊細な動きをも再現することに特化して作られている。だからこそ、コンマ数秒であってもラグがあるとそれは途轍もなく大きな障害にもなるのだ。
でも今はその心配もない。
この時代、<最新の高性能なもの>よりも、<確実に動作する信頼性>が重視されているため、十分な検証も行われていないうちに新技術を実用化することはあまりない。一部の経済圏では『より目新しいものを』と考えて新商品が発表されたりするものの、<初期トラブル>が相次ぐため、
『新しいものは信用できない』
という認識に拍車をかけているとも言われていた。けれど、一部の<新しい物好き>にはニーズがあるため、それはそれで利益は上がるらしいが。そして他の経済圏は、それらの<初期トラブル>を精査し、検討し、対策し、その後に実用化に踏み切るというのが普通だった。
なお、JAPAN-2は基本的に後者である。この辺りも、
<他所の商品を取り入れつつさらに<良いもの><ニーズに合うもの>にしてお出しするという日本人の特異性>
が遺憾なく発揮されているとも言われている。
もっとも、ある時期においてはただただ『新しいものをより早く世間に示す』ことに固執し、結果として『新しいものは信用できない』という認識を生じさせる結果になったとも言われているが。
まあそれは余談として、藤田医師によるオペは、順調に進んでいく。けれど同時に、
『このオペさえ、一時の延命に過ぎないだろうな……』
というのが偽らざる実感だった。こうやってオペをしているからこそ、間倉井医師の現在の状態がひしひしと感じられてしまうのだ。
<老いに伴う衰え>
を。
けれど、間倉井医師自身が望んでいるように、<終わり>は今じゃない。だから、
<より納得できる死>
を選択できるように努力するのだ。
『愛する人にたった一言の想いを伝える時間を生み出すために』
でもいい。少しでも後悔を減らすためにひたすら足掻く。
それだけは事実なのだった。
そう思いつつ、でもやはり心のどこかでは『死にたくない』とも思っている。これが<人間>というものだろう。人間の思考には必ず矛盾がある。むしろ矛盾がなければおかしい。それは咎められるべきものではない。
ゆえに藤田医師は、間倉井医師の『死にたくない』という願いに応えようと自らにできる最大限を発揮しようとする。
心臓の鼓動に合わせてかすかに脈動する血管をものともせず、人工血管を繋ぎ合わせていく。機械のように精密に、けれど、マイクロ単位で見れば必ず完全に常に同じそれをするわけじゃない血管の動きを感じ取り、一回一回微調整しながら縫合していく、医療用ロボットは、そんな人間の医師の繊細な動きをも再現することに特化して作られている。だからこそ、コンマ数秒であってもラグがあるとそれは途轍もなく大きな障害にもなるのだ。
でも今はその心配もない。
この時代、<最新の高性能なもの>よりも、<確実に動作する信頼性>が重視されているため、十分な検証も行われていないうちに新技術を実用化することはあまりない。一部の経済圏では『より目新しいものを』と考えて新商品が発表されたりするものの、<初期トラブル>が相次ぐため、
『新しいものは信用できない』
という認識に拍車をかけているとも言われていた。けれど、一部の<新しい物好き>にはニーズがあるため、それはそれで利益は上がるらしいが。そして他の経済圏は、それらの<初期トラブル>を精査し、検討し、対策し、その後に実用化に踏み切るというのが普通だった。
なお、JAPAN-2は基本的に後者である。この辺りも、
<他所の商品を取り入れつつさらに<良いもの><ニーズに合うもの>にしてお出しするという日本人の特異性>
が遺憾なく発揮されているとも言われている。
もっとも、ある時期においてはただただ『新しいものをより早く世間に示す』ことに固執し、結果として『新しいものは信用できない』という認識を生じさせる結果になったとも言われているが。
まあそれは余談として、藤田医師によるオペは、順調に進んでいく。けれど同時に、
『このオペさえ、一時の延命に過ぎないだろうな……』
というのが偽らざる実感だった。こうやってオペをしているからこそ、間倉井医師の現在の状態がひしひしと感じられてしまうのだ。
<老いに伴う衰え>
を。
けれど、間倉井医師自身が望んでいるように、<終わり>は今じゃない。だから、
<より納得できる死>
を選択できるように努力するのだ。
『愛する人にたった一言の想いを伝える時間を生み出すために』
でもいい。少しでも後悔を減らすためにひたすら足掻く。
それだけは事実なのだった。
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