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ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌
辻堂安吾、やきもきする
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この時代、出産は原則<無痛分娩>で行われる。なので当然、ニーナのそれも無痛分娩だ。保険適用も受けられる。
そして亜美が、無痛分娩のための処置を、間倉井医師の指示の下で行う。
<そのために作られたメイトギア>だから、手つきに一切の無駄も躊躇もなく淡々と正確に決められた手順を間違えることなくこなしていく。ロボットだから、最初の設定にミスがなければ『間違える』ことがそもそもできないのだ。
もちろん、現在のメイトギアに至る前の黎明期のロボットなどではノウハウが十分じゃなかったこともあって設定のミスなどにより不幸な事故が起こったりもしたが、数百年に亘るノウハウの蓄積は、それらを一つ一つ潰していった。
だから、人間の側がミスをしなければ、何らかの外的要因がなければ、事故は起こらない。
こう書くといかにも事故が起こりそうに感じるかもしれないが、そうではない。あくまでそういう時代だという説明なだけである。
無痛分娩なのでニーナの方も自然分娩のそれよりは余裕がありそうだったが、さすがに不安の色は隠せない。初産なので余計だろう。
とは言え、初産ともなればそれこそ時間が掛かるケースも多い。無痛分娩が行われ始めた頃に比べれば分娩のコントロールも高度に行われるようになったものの、『出産が始まって十分で終わる』ようなものでないこともまた事実である。焦っても仕方ない。
なお、ニーナの夫の辻堂安吾にも、当然、妻が産気付いたことについて連絡がいっている。しかし、
「ちくしょう……こんな時に……」
実は<立ち合い出産>を予定していたのだが、現在、災害級の大雨に見舞われており、風も強くなりつつあって、加えて学校に避難してきている者達もおり、責任者としてその場を離れることはできなかった。ちなみに<校長>や<教頭>は、明帆野以外の小規模な学校のそれを兼任しており、業務はリモート。学校の職員は安吾以外だと用務員が一人いるだけである。そちらも現在、学校の施設に異常がないかを確認に回っており手が離せない。
まあ、設備そのものは堅牢なため、滅多なことはないが。
と思っていたら、校舎の窓のシャッターが一箇所、動作不良を起こして下りておらず、手動で対処することになったりもした。しかしその程度で済んでいる。済んでいるが、安吾が病院に向かうわけにはいかなかった。
「辻堂先生、ごめんなさい……」
家族と共に避難してきていた生徒が、自分がいる所為で病院に行けないんだと考えて謝ってくる。だが当然、生徒の所為などではない。
「ああ、大丈夫。間倉井先生がいれば大丈夫だよ」
やきもきしながらも、生徒を安心させるために笑顔を浮かべたのだった。
そして亜美が、無痛分娩のための処置を、間倉井医師の指示の下で行う。
<そのために作られたメイトギア>だから、手つきに一切の無駄も躊躇もなく淡々と正確に決められた手順を間違えることなくこなしていく。ロボットだから、最初の設定にミスがなければ『間違える』ことがそもそもできないのだ。
もちろん、現在のメイトギアに至る前の黎明期のロボットなどではノウハウが十分じゃなかったこともあって設定のミスなどにより不幸な事故が起こったりもしたが、数百年に亘るノウハウの蓄積は、それらを一つ一つ潰していった。
だから、人間の側がミスをしなければ、何らかの外的要因がなければ、事故は起こらない。
こう書くといかにも事故が起こりそうに感じるかもしれないが、そうではない。あくまでそういう時代だという説明なだけである。
無痛分娩なのでニーナの方も自然分娩のそれよりは余裕がありそうだったが、さすがに不安の色は隠せない。初産なので余計だろう。
とは言え、初産ともなればそれこそ時間が掛かるケースも多い。無痛分娩が行われ始めた頃に比べれば分娩のコントロールも高度に行われるようになったものの、『出産が始まって十分で終わる』ようなものでないこともまた事実である。焦っても仕方ない。
なお、ニーナの夫の辻堂安吾にも、当然、妻が産気付いたことについて連絡がいっている。しかし、
「ちくしょう……こんな時に……」
実は<立ち合い出産>を予定していたのだが、現在、災害級の大雨に見舞われており、風も強くなりつつあって、加えて学校に避難してきている者達もおり、責任者としてその場を離れることはできなかった。ちなみに<校長>や<教頭>は、明帆野以外の小規模な学校のそれを兼任しており、業務はリモート。学校の職員は安吾以外だと用務員が一人いるだけである。そちらも現在、学校の施設に異常がないかを確認に回っており手が離せない。
まあ、設備そのものは堅牢なため、滅多なことはないが。
と思っていたら、校舎の窓のシャッターが一箇所、動作不良を起こして下りておらず、手動で対処することになったりもした。しかしその程度で済んでいる。済んでいるが、安吾が病院に向かうわけにはいかなかった。
「辻堂先生、ごめんなさい……」
家族と共に避難してきていた生徒が、自分がいる所為で病院に行けないんだと考えて謝ってくる。だが当然、生徒の所為などではない。
「ああ、大丈夫。間倉井先生がいれば大丈夫だよ」
やきもきしながらも、生徒を安心させるために笑顔を浮かべたのだった。
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