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ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌
アリシア2234-LMN、先導する
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人間二人が乗車した小型トラックの前部を軽々と持ち上げるその膂力に、立志が、
「まさか、こいつ、要人警護仕様か……?」
と声を上げる。一般仕様のメイトギアにはさすがにこれだけのパワーはないことを知っていたからだ。空車状態であれば、穴から出す程度のことはできるかもしれないが。
「そうです。祖父が僕の身辺警護のために付けてくれたものです」
秀青は簡便に事実だけを告げる。
「あんた、要人の身内だったのか……」
「<要人>とまでは言いませんが、代々なにかと軍の要職に就いてきた家系なもので……僕は軍人じゃなくて昆虫学者になりたいんですけど……」
立志と秀青がそんなやり取りをしている間、アリシア2234-LMNはトラックの下にもぐって、破損状況を確認していた。走行に支障があるようなそれがあれば応急修理が必要になるかもしれないからだ。しかし、
「かなり傷は付いているものの、今すぐ走行不能になるような損傷は認められません。ただし、状況終了後には改めて専門職に確認していただくことをお勧めします」
激しい雨を意にも介さず立ち上がり、秀青の携帯端末を通じて彼女はそう告げてきた。
「よし、乗れ! 先を急ぐぞ!」
そう声を上げる立志に、アリシア2234-LMNは、
「いえ、この先も同様の事態が想定されますので、このまま私が先行し状況を確認しそれに追走することを提案いたします」
と口にした。すると秀青もためらうことなく、
「分かった。それで行こう!」
瞬時に決断する。
「いいのかよ……?」
いくらロボットと言えども危険を感じた立志がついそう訊き返すが、
「大丈夫です。こいつは強いし優秀だ。これまでにも何度も役に立ってきてくれた。そのためのロボットですから…!」
秀青が毅然とした態度で応える。その姿に立志も圧倒されて、
「お……おう、あんたがそう言うなら……」
と承諾する。と同時に、アリシア2234-LMNはトラックに背を向けて、
「では、ついてきてください」
雨の中を走り始めた。時速約二十キロ。自動車を走らせる速度としては遅いが、道の状況を確認しながらならこれでも早いくらいだろう。そして前を走るアリシア2234-LMNは、まるでアスリートのような美しいフォームで雨を切り裂くように走っていた。それがどこか幻想的にも見えてしまう。
ただし、この時、アリシア2234-LMNは自身のセンサーをフル稼働させながら、自身が踏みしめる道路から返ってくる振動も捉えながら、空洞などがないかどうかも一瞬一瞬確認しながら走っていたのであった。
「まさか、こいつ、要人警護仕様か……?」
と声を上げる。一般仕様のメイトギアにはさすがにこれだけのパワーはないことを知っていたからだ。空車状態であれば、穴から出す程度のことはできるかもしれないが。
「そうです。祖父が僕の身辺警護のために付けてくれたものです」
秀青は簡便に事実だけを告げる。
「あんた、要人の身内だったのか……」
「<要人>とまでは言いませんが、代々なにかと軍の要職に就いてきた家系なもので……僕は軍人じゃなくて昆虫学者になりたいんですけど……」
立志と秀青がそんなやり取りをしている間、アリシア2234-LMNはトラックの下にもぐって、破損状況を確認していた。走行に支障があるようなそれがあれば応急修理が必要になるかもしれないからだ。しかし、
「かなり傷は付いているものの、今すぐ走行不能になるような損傷は認められません。ただし、状況終了後には改めて専門職に確認していただくことをお勧めします」
激しい雨を意にも介さず立ち上がり、秀青の携帯端末を通じて彼女はそう告げてきた。
「よし、乗れ! 先を急ぐぞ!」
そう声を上げる立志に、アリシア2234-LMNは、
「いえ、この先も同様の事態が想定されますので、このまま私が先行し状況を確認しそれに追走することを提案いたします」
と口にした。すると秀青もためらうことなく、
「分かった。それで行こう!」
瞬時に決断する。
「いいのかよ……?」
いくらロボットと言えども危険を感じた立志がついそう訊き返すが、
「大丈夫です。こいつは強いし優秀だ。これまでにも何度も役に立ってきてくれた。そのためのロボットですから…!」
秀青が毅然とした態度で応える。その姿に立志も圧倒されて、
「お……おう、あんたがそう言うなら……」
と承諾する。と同時に、アリシア2234-LMNはトラックに背を向けて、
「では、ついてきてください」
雨の中を走り始めた。時速約二十キロ。自動車を走らせる速度としては遅いが、道の状況を確認しながらならこれでも早いくらいだろう。そして前を走るアリシア2234-LMNは、まるでアスリートのような美しいフォームで雨を切り裂くように走っていた。それがどこか幻想的にも見えてしまう。
ただし、この時、アリシア2234-LMNは自身のセンサーをフル稼働させながら、自身が踏みしめる道路から返ってくる振動も捉えながら、空洞などがないかどうかも一瞬一瞬確認しながら走っていたのであった。
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