愛しのアリシア

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
485 / 804
ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳

元軍人の男、勝利を確信する

しおりを挟む
<元軍人の男>が、サーペントの隊員に一泡吹かせてやろうと賭けに出た一撃だったが、

『もらった!』

とつい思ってしまったが、しかし、彼がフルオートで放った弾丸は、一発も届かなかった。『狙いが逸れた』のではない。『届かなかった』のだ。彼とサーペントの隊員との間に、突然、障害物が現れ、それがすべての弾丸を受け止めてしまったのである。

「なんだ……っ!?」

ついそう声を出してしまった<元軍人の男>だったが、その<障害物>を完全に把握することはできなかった。弾丸を受け止めたその次の瞬間には、姿が見えなくなってしまったからである。ただ、人間のような姿をしていたことだけは分かった。

人間のような姿をしていて、四十五口径の弾丸数発を受け止めて、そのまままた姿を隠す。

そんな芸当ができるのは他にはいない。

<要人警護仕様のメイトギア>

だ。要人警護仕様のメイトギアがいずこからか現れてサーペントの隊員を庇い、また姿を消したのだ。

「くそがあっ!!」

それまで冷静だった<元軍人の男>が、あからさまに苛立った様子を見せた。他でもないロボットが自分の邪魔をしたのだから、無理もないかもしれないが。

しかし、その隙を見逃してくれるほど、サーペントの隊員も素人ではなかった。拳銃を持っていた右腕に数発の銃弾を受け、<元軍人の男>は、

「があっ!!」

と悲鳴を上げてしまう。さらに今度はテイザー銃で撃たれ、思い切り酷い<こむら返り>を生じたかのように体中の筋肉が強度に収縮。まったく身動きが取れなくなってしまった。

すかさずサーペントの隊員は<元軍人の男>に駆け寄り拳銃を蹴飛ばし専用の拘束具を使ってたちまち拘束した上で、負傷した右腕の応急処置を行ってやった。

これできちんと治療を受ければ右腕もほぼ後遺症もなく完治するだろう。その程度には医療も発達している。

『……それにしても、さっきのは……』

<元軍人の男>を完全に拘束して無力化したのを確かめて、サーペントの隊員は自分を庇うように現れたメイトギアが去った方向を見た。

装備しているゴーグルはその映像も確実に捉え、おおよその機種も判別できたが、それにしても奇妙な動きだと感じていた。メイトギアの機能として自分を庇ってくれたのだとしても、それだけならこんなに急いで立ち去る必要もない。

しかも、監視のドローンさえ、その姿を見失ってしまった。ドローンの索敵能力をよく理解して、センサーでは捉えられない場所に駆け込んだのが分かる動きなのだ。

そんなことをしなければいけない理由が分からなかったのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

公安部公安総務課魔術係

JUN
SF
 魔術というものが現実のものとなって以来、犯罪に魔術が使用され、被害が大きくなる傾向があった。そこで発足されたのが、公安部公安総務課第6公安捜査係、通称魔術係。自己評価の低い主人公やBL好きで酒が入ると面倒臭い美人上司などクセ者揃いのデコボコチームは、今日も犯罪魔術者を追いかける。魔術絡みの犯罪、見かけましたらすぐにお知らせください。

モニターに応募したら、系外惑星に来てしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。

津嶋朋靖(つしまともやす)
SF
近未来、物体の原子レベルまでの三次元構造を読みとるスキャナーが開発された。 とある企業で、そのスキャナーを使って人間の三次元データを集めるプロジェクトがスタートする。 主人公、北村海斗は、高額の報酬につられてデータを取るモニターに応募した。 スキャナーの中に入れられた海斗は、いつの間にか眠ってしまう。 そして、目が覚めた時、彼は見知らぬ世界にいたのだ。 いったい、寝ている間に何が起きたのか? 彼の前に現れたメイド姿のアンドロイドから、驚愕の事実を聞かされる。 ここは、二百年後の太陽系外の地球類似惑星。 そして、海斗は海斗であって海斗ではない。 二百年前にスキャナーで読み取られたデータを元に、三次元プリンターで作られたコピー人間だったのだ。 この惑星で生きていかざるを得なくなった海斗は、次第にこの惑星での争いに巻き込まれていく。 (この作品は小説家になろうとマグネットにも投稿してます)

アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)

愛山雄町
SF
 ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め! ■■■  人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。 ■■■  宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。  アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。  4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。  その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。  彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。 ■■■  小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。 ■■■ 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。

後天スキル【ブラックスミス】で最強無双⁈~魔砲使いは今日も機械魔を屠り続ける~

華音 楓
SF
7歳で受けた職業診断によって憧れの狩猟者になれず、リヒテルは失望の淵に立たされていた。 しかし、その冒険心は消えず、立入禁止区域に足を踏み入れ、そこに巣食う機械魔に襲われ、命の危機に晒される。 すると一人の中年男性が颯爽と現れ、魔砲と呼ばれる銃火器を使い、全ての機械魔を駆逐していった。 その姿にあこがれたリヒテルは、男に弟子入りを志願するが、取り合ってもらえない。 しかし、それでも諦められず、それからの日々を修行に明け暮れたのだった。 それから8年後、リヒテルはついに憧れの狩猟者となり、後天的に得た「ブラックスミス」のスキルを駆使し、魔砲を武器にして機械魔と戦い続ける。 《この物語は、スチームパンクの世界観を背景に、リヒテルが機械魔を次々と倒しながら、成長してい物語です》 ※お願い 前作、【最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~】からの続編となります より内容を楽しみたい方は、前作を一度読んでいただければ幸いです

♡してLv.Up【MR無責任種付おじさん】の加護を授かった僕は実家を追放されて無双する!戻ってこいと言われてももう遅い!

黒須
ファンタジー
 これは真面目な物語です。  この世界の人間は十二歳になると誰もが天より加護を授かる。加護には様々なクラスやレアリティがあり、どの加護が発現するかは〈加護の儀〉という儀式を受けてみなければわからない。  リンダナ侯爵家嫡男の主人公も十二歳になり〈加護の儀〉を受ける。  そこで授かったのは【MR無責任種付おじさん】という加護だった。  加護のせいで実家を追放された主人公は、デーモンの加護を持つ少女と二人で冒険者になり、金を貯めて風俗店に通う日々をおくる。  そんなある日、勇者が魔王討伐に失敗する。  追い込まれた魔王は全世界に向けて最悪の大呪魔法(だいじゅまほう)ED(イーディー)を放った。  そして人類は子孫を残せなくなる。  あの男以外は!  これは【MR無責任種付おじさん】という加護を授かった男が世界を救う物語である。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

異星人が見た異世界転生記(我輩はゴアである・改)

雲黒斎草菜
SF
「ある日、我輩は雷に打たれて墜落。立ち入り禁止の星域に近づいた報いなのか、着いたところはなにやら怪しげな世界。そこはかとなく怪奇でありながら甘美であった……」で始まった内容が、二巻あたりから超危険なやり取りに変貌していきます。こうなったら掲載停止処置も覚悟の上です。そんなドタバタ日常SFコメディーでありながら、すごくITでもある物語です。   ちなみに、パソコンや電子回路を専攻している方がお読みになると「プフッ」と笑うかもしれません。

処理中です...