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ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳
元軍人の男、サーペントに肉薄する
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こうして苛烈な三度の大戦を経て、ようやく、AIとロボットには厳しい制限が設けられた。
また、人間自身も、『いかに勝利を得るか?』ではなく、戦争そのものを回避するための努力をするようになった。地球で行われている努力を、火星でも行うようになったのだ。
正直なところそれがどこまでもつかは分からないものの、実際の犠牲者数は、数を追うごとに減ってきていたのも事実である。
とは言え、万が一に備えることはやめるわけにもいかず、今なお、研究は続けられているそうだ。
サーペントに配備されている<戦闘用メイトギア>は、その一つの到達点とも言えるだろう。メイトギアであるがゆえの非効率性(人間のように振舞おうとする部分)を排除したのが<アームドエージェント>ということにはなるのだが、この<戦闘用メイトギア>の存在があればこそそういう方向にも至れたのだろう。
が、この時、<元軍人の男>と対峙したのは、正真正銘、人間の隊員だった。
<元軍人の男>はそれを察し、さらに距離を詰めてくる。対テロ部隊の任務はあくまで<対象の拘束>であって、容赦なく殺害するという<超法規的措置>が行われるのは、よほどの相手の場合に限られるのだ。
その事実を知る<元軍人の男>は、サーペントが初手では自分を殺しに来ないことを利用し、先制するつもりだったのである。
実際、この時、サーペントの隊員二人のうちの一人が、喉に銃弾を受けてその場に倒れ伏した。
サーペントの隊員が身に付けている<服>は、防刃防弾性の高い<装甲スキン>製のものだった。しかも、対物ライフル弾を至近距離から受けたりでもしない限り破られないという、要人警護仕様のメイトギアに用いられているものと同等品であった。
しかし、貫通こそしないものの、メイトギアでさえ着弾の衝撃についてはボディそのもので受け止める構造になっているくらいだから、生身の人間の場合は、至近距離でそれなりの口径の銃弾の直撃を急所に受ければ、意識を失う程度のことは起こりえる。
<元軍人の男>はそれを知っていて、喉を狙い、実際に命中させたのだ。まあ、半分はまぐれのようなものではあったが。それでも、狙ってそのまぐれを引き寄せることができる程度の腕はあるということであるとも言えるが。
なお、男が所持していた拳銃は、AIを搭載していない、現在では所持そのものが違法となる、第一次火星大戦以前に製造された旧規格のものである。四十五口径で、フルオートによる連射も可能な、生身の人間で使用できる拳銃のうちでは最強格とされた兵器であった。
また、人間自身も、『いかに勝利を得るか?』ではなく、戦争そのものを回避するための努力をするようになった。地球で行われている努力を、火星でも行うようになったのだ。
正直なところそれがどこまでもつかは分からないものの、実際の犠牲者数は、数を追うごとに減ってきていたのも事実である。
とは言え、万が一に備えることはやめるわけにもいかず、今なお、研究は続けられているそうだ。
サーペントに配備されている<戦闘用メイトギア>は、その一つの到達点とも言えるだろう。メイトギアであるがゆえの非効率性(人間のように振舞おうとする部分)を排除したのが<アームドエージェント>ということにはなるのだが、この<戦闘用メイトギア>の存在があればこそそういう方向にも至れたのだろう。
が、この時、<元軍人の男>と対峙したのは、正真正銘、人間の隊員だった。
<元軍人の男>はそれを察し、さらに距離を詰めてくる。対テロ部隊の任務はあくまで<対象の拘束>であって、容赦なく殺害するという<超法規的措置>が行われるのは、よほどの相手の場合に限られるのだ。
その事実を知る<元軍人の男>は、サーペントが初手では自分を殺しに来ないことを利用し、先制するつもりだったのである。
実際、この時、サーペントの隊員二人のうちの一人が、喉に銃弾を受けてその場に倒れ伏した。
サーペントの隊員が身に付けている<服>は、防刃防弾性の高い<装甲スキン>製のものだった。しかも、対物ライフル弾を至近距離から受けたりでもしない限り破られないという、要人警護仕様のメイトギアに用いられているものと同等品であった。
しかし、貫通こそしないものの、メイトギアでさえ着弾の衝撃についてはボディそのもので受け止める構造になっているくらいだから、生身の人間の場合は、至近距離でそれなりの口径の銃弾の直撃を急所に受ければ、意識を失う程度のことは起こりえる。
<元軍人の男>はそれを知っていて、喉を狙い、実際に命中させたのだ。まあ、半分はまぐれのようなものではあったが。それでも、狙ってそのまぐれを引き寄せることができる程度の腕はあるということであるとも言えるが。
なお、男が所持していた拳銃は、AIを搭載していない、現在では所持そのものが違法となる、第一次火星大戦以前に製造された旧規格のものである。四十五口径で、フルオートによる連射も可能な、生身の人間で使用できる拳銃のうちでは最強格とされた兵器であった。
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