愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳

2234-HHC、応戦する

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そのアリシア2234-HHCは、通常の<笑顔>ではなかった。標準状態のエプロンドレスを模した外装のままでありつつ、非常に冷淡な表情でサイボーグの男を睨みつけていた。けれどサイボーグの男は、そんなことはお構いなしに全力で掴みかかる。

けれどアリシア2234-HHCはその腕を滑らせ逸らしつつもう片方の手で掴み自らの体を回転させ、巻き込むようにしてサイボーグの男の左腕をへし折り、もぎ取ってしまった。

一瞬も躊躇せずに。

その動きからも、要人警護仕様であることは明白だった。しかも、<戦闘モード>を起動させた。

とは言え、普通は、戦闘モードを起動させていてもそんなことはしない。いくら相手がサイボーグであっても。

ただ、今回の件は完全に相手が<違法サイボーグ>であることも明白だ。一応、信号自体は合法なそれを示していたが、まごうことなき欺瞞であることは疑う余地もない。となれば、凶器を振り回して人間に危害を加えようとしているのと同じ。<凶器>を取り上げ制圧することは可能だ。

警護対象の安全を確保するためにであれば。

それはつまり、この<アリシア2234-HHCの外見を持った要人警護仕様のアリシア>の警護対象が傍にいるということだろうが、さすがに姿は隠しているらしく見当たらない。見当たらなくてもすぐ傍にいるのは間違いない。

「くそがあっ!!」

左腕を失っても、サイボーグの男は怯まなかった。むしろさらに感情を迸らせ体を起こし、左の回し蹴り。アリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)の体を捉えたと思ったが、

「!?」

何とも言えない違和感に、サイボーグの男は驚愕する。まるで紙人形でも蹴ったかのように、何かを捉えた反応こそあるものの、まったく手応えがなかったのである。

アリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)が自身の体をわずかに浮かしつつ、蹴りの威力を殺すように飛んだのだ。飛びつつ、サイボーグの男の左脚を捉え、着地と同時にやはりすさまじい勢いで体を回転させてそれをもぎ取ってしまった。

「なあっ!?」

これまで彼が見てきたどんな格闘術とも違う動きに、対処法が思い浮かばず、混乱する。

左腕左脚を失ってもなお、彼の憎悪は収まらなかったが、すでに事実上、勝負は決した。四肢が揃っていても歯が立たなかった相手に、右腕右脚だけでどう勝つというのか。

なのに、絶妙なバランスで立ち上がったサイボーグの男は、なおもアリシア2234-HHC(の外見を持つ要人警護仕様機)に右手を伸ばすが、今度はその右腕に飛びつかれてバランスを崩し前のめりに転倒、同時に右腕ももぎ取られてしまったのだった。

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