愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳

柔術使いの男、一切手加減しない

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そう、この男は、自身の柔術の技を、ルールなど関係ない状況で容赦なく相手に掛けたいと考えていたのだ。そして今、絶好の機会を得た。

足を掃って体勢を崩させ、一切の手加減なく頭からアスファルトに叩きつけようとする。

が、その相手は、ほとんど逆さまにされながらも投げられながらも体勢を整え、投げられた勢いを利用して逆に男の体勢を崩してきた。さらに路面に触れた瞬間に体を回転させ、衝撃を逃がしつつ、<柔術使いの男>の体をアスファルトの上に転がしてみせた。

「!?」

この事態に男は焦るものの、体が無意識に反応して<受け身>を取りつつ、自身の腕が取られて関節を極められそうになっているのも察し、引き抜いてみせた。

「んならっ!!」

男は声を上げつつ体を起こし相手を見ようとしたが、しかし、そこには誰もいなかった。

瞬間、背筋にゾワッと冷たいものが奔り抜ける。男が体を起こすまでの間にもう背後に回り込まれていたのだ。それでも反射的に再び自分に延ばされた腕を掴んで同時に体を前転させるくらいのつもりで前屈みになり、今度は<背負い投げ>の要領でやはり相手の頭を路面に叩きつけようとした。

これもまた、完全に決まれば命すら危うい危険なものだった、なのに、男の表情にはむしろ驚愕とも言うべきそれが張り付いていた。

手応えがまったくなかったのだ。まるでベッドのシーツにでも技を掛けたかのように、何かに触れている感触はあるのに、重量がほとんど感じられない。軽すぎて拍子抜けしてしまう。

当然か。相手は、男に『投げられる』のではなく、自ら路面を蹴って敢えて『飛んだ』のだから。そして空中で体を回転させて、すとんと足をつき、と同時に男のそれを上回る速度で体を回転させて巻き込んで見せた。

すると<柔術使いの男>の体が宙を舞い、

「くうっ!!」

再び受け身を取って見せるものの、そこまでだった。その次の瞬間には、男は自分の体が動かないことに気付く。いや、厳密には動くのだが、自由には動かせないのだ。

いつの間にか足が拘束され、腕も後ろ手に拘束され、しかも、明らかに<逆エビ反り>の形で動かなくなっている。

「え…? え……!?」

一体、何が起こっているのかまったく理解できないまま、今度は口まで塞がれる。タオルか何かを捩じって紐状にしたものを咥えさせられ、頭の後ろで縛られたらしい。

あまりに一瞬の出来事の上、相手の姿すらまともに見ることできないまま、さらに目までタオルらしきもので塞がれて、男は自分の体が担ぎ上げられ運ばれるのを感じたのだった。

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