434 / 804
ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳
岩丸ゆかり、宙を舞う
しおりを挟む
「え? 何、何、何……っ!?」
床に寝転がされていたと思ったら突然体を抱えあげられてものすごいスピードで移動し始めて、ゆかりはパニックに陥る。しかし、
「安全な場所までまずは移動します」
米袋のように抱えられたと思ったらそこから<お姫様抱っこ>に移行、少し楽になったところにそう声を掛けられ、
『え…? 日本語……?』
と思った。確かに日本語だった。現在、火星では英語が主な公用語とされているものの、各都市ではそれぞれ開発を主導した国の言語が主に使われる習慣が残っており、<都市としてのJAPAN-2>では日本語が当然のように使われていた。ゆかりを連れ出した<侵入者>は、ゆかりが<都市としてのJAPAN-2>に住んでいることを察して日本語で話しかけたようだ。
まともに点いている街灯が少なく、しかも建物の照明さえまばらなこともあってはっきりと顔が見えないが、
「あなた、アリシア……だよね?」
JAPAN-2社が製造販売しているアリシアシリーズだとゆかりは思って口にする。それに対して、<侵入者>は、
「はい。私は、JAPAN-2社製アリシア2234-HHCです。岩丸ゆかり様からの緊急信号を受信。救難に参りました」
と告げた。JAPAN-2社製のロボットに受信される信号だったことは承知していたが、まさかこんな近くにJAPAN-2社製のメイトギアがいるとは。さりとて、<アリシア2234-HHC>と言えば、
<クイーン・オブ・マーズ号事件>
での活躍をきっかけに大人気になったアリシアシリーズであることは、ゆかりも知っていた。だからアリシア2234-HHCがここにいてもそんなに不思議ではないのかもしれない。
しかし、
「岩丸ゆかり様、このままニューオクラホマ市警に保護していただくつもりだったのですが、どうやらそうはいかなくなりました。テロリストがこちらを捜索しているようです。なので、しばし身を隠しておいてください。警察には位置を知らせておきますので、動かず、救助をお待ちください」
と言って、地面を蹴り、空中高く舞い上がった。
「え? え? えええ~!?」
自身の体も一緒に空中高く舞い上がり、ゆかりは思わず声を漏らす。それには構わず、アリシア2234-HHCと名乗ったそのメイトギアは、隣り合ったビルの壁を何度も蹴ってさらに上へ上へと移動して、八階建ての、この周辺では最も高いビルの屋上に着地、
「ここならしばらくは発見されないでしょう。身を低くし、動かないように」
「わ、分かった……」
ゆかりが応えたのを確認すると、アリシア2234-HHCらしきメイトギアは、再び空中へと身を躍らせたのだった。
床に寝転がされていたと思ったら突然体を抱えあげられてものすごいスピードで移動し始めて、ゆかりはパニックに陥る。しかし、
「安全な場所までまずは移動します」
米袋のように抱えられたと思ったらそこから<お姫様抱っこ>に移行、少し楽になったところにそう声を掛けられ、
『え…? 日本語……?』
と思った。確かに日本語だった。現在、火星では英語が主な公用語とされているものの、各都市ではそれぞれ開発を主導した国の言語が主に使われる習慣が残っており、<都市としてのJAPAN-2>では日本語が当然のように使われていた。ゆかりを連れ出した<侵入者>は、ゆかりが<都市としてのJAPAN-2>に住んでいることを察して日本語で話しかけたようだ。
まともに点いている街灯が少なく、しかも建物の照明さえまばらなこともあってはっきりと顔が見えないが、
「あなた、アリシア……だよね?」
JAPAN-2社が製造販売しているアリシアシリーズだとゆかりは思って口にする。それに対して、<侵入者>は、
「はい。私は、JAPAN-2社製アリシア2234-HHCです。岩丸ゆかり様からの緊急信号を受信。救難に参りました」
と告げた。JAPAN-2社製のロボットに受信される信号だったことは承知していたが、まさかこんな近くにJAPAN-2社製のメイトギアがいるとは。さりとて、<アリシア2234-HHC>と言えば、
<クイーン・オブ・マーズ号事件>
での活躍をきっかけに大人気になったアリシアシリーズであることは、ゆかりも知っていた。だからアリシア2234-HHCがここにいてもそんなに不思議ではないのかもしれない。
しかし、
「岩丸ゆかり様、このままニューオクラホマ市警に保護していただくつもりだったのですが、どうやらそうはいかなくなりました。テロリストがこちらを捜索しているようです。なので、しばし身を隠しておいてください。警察には位置を知らせておきますので、動かず、救助をお待ちください」
と言って、地面を蹴り、空中高く舞い上がった。
「え? え? えええ~!?」
自身の体も一緒に空中高く舞い上がり、ゆかりは思わず声を漏らす。それには構わず、アリシア2234-HHCと名乗ったそのメイトギアは、隣り合ったビルの壁を何度も蹴ってさらに上へ上へと移動して、八階建ての、この周辺では最も高いビルの屋上に着地、
「ここならしばらくは発見されないでしょう。身を低くし、動かないように」
「わ、分かった……」
ゆかりが応えたのを確認すると、アリシア2234-HHCらしきメイトギアは、再び空中へと身を躍らせたのだった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。
きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕!
突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。
そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?)
異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!
「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )
あおっち
SF
とうとう、AXIS軍が、椎葉きよしたちの奮闘によって、対馬市へ追い詰められたのだ。
そして、戦いはクライマックスへ。
現舞台の北海道、定山渓温泉で、いよいよ始まった大宴会。昨年あった、対馬島嶼防衛戦の真実を知る人々。あっと、驚く展開。
この序章3/7は主人公の椎葉きよしと、共に闘う女子高生の物語なのです。ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。
いよいよジャンプ血清を守るシンジケート、オリジナル・ペンタゴンと、異星人の関係が少しづつ明らかになるのです。
次の第4部作へ続く大切な、ほのぼのストーリー。
疲れたあなたに贈る、SF物語です。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
ぼくと怪物三人組@トーキョーベイエナジーアイランド
alphapolis_20210224
SF
今の延長線からちょっとずれた未来。
東京湾に人工島が浮かんでいた。そこは原子力発電所であり、管理は人工知能と人造人間が行っていた。
その人造人間と本土から逃れてきた犯罪者崩れたちは島の各所で生活し、なわばりを作り、時には衝突していた。
『ぼく』は三人の仲間とともに自警団の結成を目指す。島の治安を向上するために。
そして、そこからぼくら、宗教団体、政府、人工知能がからみ合う物語が発進する。
※本作品においては、犯罪、暴力行為の描写があります。いずれも小説上の表現として用いています。その点ご理解の上お読みください。
*「カクヨム」に投稿しています(名義:@ns_ky_20151225)。
*「小説家になろう」に投稿しています(名義:naro_naro)。
*「エブリスタ」に投稿しています(名義:estar_20210224)。
*「ノベルアップ+」に投稿しています(名義:novelup20210528)。
ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
八ッ坂千鶴
SF
普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。
そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!
恋するジャガーノート
まふゆとら
SF
【全話挿絵つき!巨大怪獣バトル×怪獣擬人化ラブコメ!】
遊園地のヒーローショーでスーツアクターをしている主人公・ハヤトが拾ったのは、小さな怪獣・クロだった。
クロは自分を助けてくれたハヤトと心を通わせるが、ふとしたきっかけで力を暴走させ、巨大怪獣・ヴァニラスへと変貌してしまう。
対怪獣防衛組織JAGD(ヤクト)から攻撃を受けるヴァニラス=クロを救うため、奔走するハヤト。
道中で事故に遭って死にかけた彼を、母の形見のペンダントから現れた自称・妖精のシルフィが救う。
『ハヤト、力が欲しい? クロを救える、力が』
シルフィの言葉に頷いたハヤトは、彼女の協力を得てクロを救う事に成功するが、
光となって解けた怪獣の体は、なぜか美少女の姿に変わってしまい……?
ヒーローに憧れる記憶のない怪獣・クロ、超古代から蘇った不良怪獣・カノン、地球へ逃れてきた伝説の不死蝶・ティータ──
三人(体)の怪獣娘とハヤトによる、ドタバタな日常と手に汗握る戦いの日々が幕を開ける!
「pixivFANBOX」(https://mafuyutora.fanbox.cc/)と「Fantia」(fantia.jp/mafuyu_tora)では、会員登録不要で電子書籍のように読めるスタイル(縦書き)で公開しています!有料コースでは怪獣紹介ミニコーナーも!ぜひご覧ください!
※登場する怪獣・キャラクターは全てオリジナルです。
※全編挿絵付き。画像・文章の無断転載は禁止です。
VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~
オイシイオコメ
SF
75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。
この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。
前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。
(小説中のダッシュ表記につきまして)
作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる