愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳

岩丸ゆかり、宙を舞う

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「え? 何、何、何……っ!?」

床に寝転がされていたと思ったら突然体を抱えあげられてものすごいスピードで移動し始めて、ゆかりはパニックに陥る。しかし、

「安全な場所までまずは移動します」

米袋のように抱えられたと思ったらそこから<お姫様抱っこ>に移行、少し楽になったところにそう声を掛けられ、

『え…? 日本語……?』

と思った。確かに日本語だった。現在、火星では英語が主な公用語とされているものの、各都市ではそれぞれ開発を主導した国の言語が主に使われる習慣が残っており、<都市としてのJAPAN-2ジャパンセカンド>では日本語が当然のように使われていた。ゆかりを連れ出した<侵入者>は、ゆかりが<都市としてのJAPAN-2ジャパンセカンド>に住んでいることを察して日本語で話しかけたようだ。

まともに点いている街灯が少なく、しかも建物の照明さえまばらなこともあってはっきりと顔が見えないが、

「あなた、アリシア……だよね?」

JAPAN-2ジャパンセカンド社が製造販売しているアリシアシリーズだとゆかりは思って口にする。それに対して、<侵入者>は、

「はい。私は、JAPAN-2ジャパンセカンド社製アリシア2234-HHCです。岩丸ゆかり様からの緊急信号を受信。救難に参りました」

と告げた。JAPAN-2ジャパンセカンド社製のロボットに受信される信号だったことは承知していたが、まさかこんな近くにJAPAN-2ジャパンセカンド社製のメイトギアがいるとは。さりとて、<アリシア2234-HHC>と言えば、

<クイーン・オブ・マーズ号事件>

での活躍をきっかけに大人気になったアリシアシリーズであることは、ゆかりも知っていた。だからアリシア2234-HHCがここにいてもそんなに不思議ではないのかもしれない。

しかし、

「岩丸ゆかり様、このままニューオクラホマ市警に保護していただくつもりだったのですが、どうやらそうはいかなくなりました。テロリストがこちらを捜索しているようです。なので、しばし身を隠しておいてください。警察には位置を知らせておきますので、動かず、救助をお待ちください」

と言って、地面を蹴り、空中高く舞い上がった。

「え? え? えええ~!?」

自身の体も一緒に空中高く舞い上がり、ゆかりは思わず声を漏らす。それには構わず、アリシア2234-HHCと名乗ったそのメイトギアは、隣り合ったビルの壁を何度も蹴ってさらに上へ上へと移動して、八階建ての、この周辺では最も高いビルの屋上に着地、

「ここならしばらくは発見されないでしょう。身を低くし、動かないように」

「わ、分かった……」

ゆかりが応えたのを確認すると、アリシア2234-HHCらしきメイトギアは、再び空中へと身を躍らせたのだった。

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