430 / 804
ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳
逃走犯、何者かを振り切る
しおりを挟む
こうして男達は、ウルヴァリン・ガーデンへと逃げ込むことに成功した。
そこは道が狭く、そもそも通行もまばらだった。幹線道路はこの地域を迂回するようにして整備され、よほどの事情がなければほとんどの人間は入っても来ない。
全体的に照明も少なくて薄暗い印象もある。灯りが点いていない建物も多い。他の地域とはまったくの別世界のようだ。
逃げることを優先したため、男達はそこに、岩丸ゆかりも結局そのまま連れてきてしまった。
「とにかく始末して、ゴミと一緒に放り出しとくか」
ただでさえ狭い道からさらに狭い路地に入った自動車の中で、男は仲間に告げるために独り言のように口にした。そして、薄汚れたビルの裏手で自動車が止まると、ドアを開けてゆかりを抱えたまま降りようとする。
が、その瞬間、目の前で何かがぶつかった。
「なんだ!?」
男が声を上げると、
「おい! 今のはなんだ!? サツか!?」
声を掛けられる。見上げた男の視線の先には、ヘルメットとゴーグルを着けた、身長二メートルを大きく超えた巨漢の姿。
いや、違う。『ヘルメットとゴーグルを着けている』のではない。<そういう顔>なのだ。人工物で構成された顔と体。しかし、<ロボット>ではない。
<サイボーグ>であった。
ビルから出てきたサイボーグが話し掛けてきたのだ。男達の仲間であった。
そしてその<サイボーグの男>は、自分が弾き飛ばした相手を目で追ったが、正体さえ確認できないまま見失っていた。
「なんかいたのか?」
ゆかりを抱えた男が逆に問い掛けてくる。
「ああ。お前らの後ろから走ってきて、回り込もうとしてたから、弾き飛ばしてやったんだ。感触からするとメイトギアみてえだったが、早くてよ。捉えきれなかったな」
「マジか?」
「どこだ!?」
男達は周囲を見渡すが、
「もういねえよ。姿を隠しちまった。とにかく中に入れ。サツかもしれねえが、サツにしちゃ動きがおかしい」
サイボーグの男にそう促され、自動車の男達はビルの中へと急いで駆け込み、サイボーグの男が再度周囲を見渡して、ドアを閉めた。
この時、五階建てのビルの屋上には、他の地域から微かに届く照明の光にうっすらと浮かび上がった何者かの姿があった。
「……」
その<何者か>は一言も発することなく周囲を見渡す。まるで地形情報を取得するかのように。そして薄暗がりの中、ためらうことなく屋上から五階の窓枠に掴まってぶら下がり、左手でぶら下がりながら右手をガラスへと押し付けた。すると次の瞬間、ガラスにひびが入り、その一部を指で突き破って鍵を開けたのであった。
そこは道が狭く、そもそも通行もまばらだった。幹線道路はこの地域を迂回するようにして整備され、よほどの事情がなければほとんどの人間は入っても来ない。
全体的に照明も少なくて薄暗い印象もある。灯りが点いていない建物も多い。他の地域とはまったくの別世界のようだ。
逃げることを優先したため、男達はそこに、岩丸ゆかりも結局そのまま連れてきてしまった。
「とにかく始末して、ゴミと一緒に放り出しとくか」
ただでさえ狭い道からさらに狭い路地に入った自動車の中で、男は仲間に告げるために独り言のように口にした。そして、薄汚れたビルの裏手で自動車が止まると、ドアを開けてゆかりを抱えたまま降りようとする。
が、その瞬間、目の前で何かがぶつかった。
「なんだ!?」
男が声を上げると、
「おい! 今のはなんだ!? サツか!?」
声を掛けられる。見上げた男の視線の先には、ヘルメットとゴーグルを着けた、身長二メートルを大きく超えた巨漢の姿。
いや、違う。『ヘルメットとゴーグルを着けている』のではない。<そういう顔>なのだ。人工物で構成された顔と体。しかし、<ロボット>ではない。
<サイボーグ>であった。
ビルから出てきたサイボーグが話し掛けてきたのだ。男達の仲間であった。
そしてその<サイボーグの男>は、自分が弾き飛ばした相手を目で追ったが、正体さえ確認できないまま見失っていた。
「なんかいたのか?」
ゆかりを抱えた男が逆に問い掛けてくる。
「ああ。お前らの後ろから走ってきて、回り込もうとしてたから、弾き飛ばしてやったんだ。感触からするとメイトギアみてえだったが、早くてよ。捉えきれなかったな」
「マジか?」
「どこだ!?」
男達は周囲を見渡すが、
「もういねえよ。姿を隠しちまった。とにかく中に入れ。サツかもしれねえが、サツにしちゃ動きがおかしい」
サイボーグの男にそう促され、自動車の男達はビルの中へと急いで駆け込み、サイボーグの男が再度周囲を見渡して、ドアを閉めた。
この時、五階建てのビルの屋上には、他の地域から微かに届く照明の光にうっすらと浮かび上がった何者かの姿があった。
「……」
その<何者か>は一言も発することなく周囲を見渡す。まるで地形情報を取得するかのように。そして薄暗がりの中、ためらうことなく屋上から五階の窓枠に掴まってぶら下がり、左手でぶら下がりながら右手をガラスへと押し付けた。すると次の瞬間、ガラスにひびが入り、その一部を指で突き破って鍵を開けたのであった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
40代(男)アバターで無双する少女
かのよ
SF
同年代の子達と放課後寄り道するよりも、VRMMOでおじさんになってるほうが幸せだ。オープンフィールドの狩りゲーで大剣使いをしているガルドこと佐野みずき。女子高生であることを完璧に隠しながら、親父どもが集まるギルドにいい感じに馴染んでいる…! ひたすらクエストをやりこみ、酒場で仲間と談笑しているおじさんの皮を被った17歳。しかし平穏だった非日常を、唐突なギルドのオフ会とログアウト不可能の文字が破壊する!
序盤はVRMMO+日常系、中盤から転移系の物語に移行していきます。
表紙は茶二三様から頂きました!ありがとうございます!!
校正を加え同人誌版を出しています!
https://00kanoyooo.booth.pm/
こちらにて通販しています。
更新は定期日程で毎月4回行います(2・9・17・23日です)
小説家になろうにも「40代(男)アバターで無双するJK」という名前で投稿しています。
この作品はフィクションです。作中における犯罪行為を真似すると犯罪になります。それらを認可・奨励するものではありません。
「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.
あおっち
SF
海を埋め尽くすAXISの艦隊。
飽和攻撃が始まる台湾、金門県。
海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。
同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。
苫小牧市を守るシーラス防衛軍。
そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った!
SF大河小説の前章譚、第5部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
86,400秒 異世界冒険奇譚 ~JK勇者は一日の時間を衝動買い。 流れる時間をエネルギーに変え、今日もスキルをぶっ放す!~
北葉ポウ
ファンタジー
ある日、突然勇者になった崖っぷち受験生な私。
不思議な運命に導かれ、愛猫カナタに会うため、異世界「ショルゼア」に転移した。
86400円でゲットしたのは一日分の無双時間。
この間なら、どんな魔法も能力もつくって真似して、一瞬で発動。コレ絶対、神スキル認定だわっ!
でも使い切ってしまったらなんか色々ヤバイらしい。
なんとなかるさ精神で、モフモフイケメン聖獣やキュートな癒し系魔獣と共に、邪竜を討つ勇者になるべく旅をする。
自らの意志で新しい世界をクリエイト――――。
そんな冒険奇譚が、今、始まる。
銀色の雲
火曜日の風
SF
西暦207x年。太平洋上空に浮かぶ浮遊都市『リュボフ』
表向きは異星人の住む居住区となっている。そこに住む一人の青年は、その国の国王ある。しかし、国民は3人しかいなかった。
「そうだ、移民を受け入れよう。もちろん猫耳の・・・」そう考えた彼は、銀河系最速最強のAIを引き連れ、旅立つのであった。
名も無き一つの惑星に着いた彼は、その惑星を狙う怪しい一団を見つける。ここで原住民を巻き込んだ、戦いが始まる?
★『地球から追放されたけど、お土産付きで帰ってきます。』の続編となります。
人物背景等は、前作を読んでいただくと分りやすいと思います。作者ページの登録作品へ
※なろう転載、タイトル変更しております。
フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~
於田縫紀
SF
大学を卒業した3月末に両親が事故で死亡。保険金目当ての伯母一家のせいで生活が無茶苦茶に。弁護士を入れてシャットアウトした後、私は生命維持装置付の最高級VR機器を購入し、腐った現実から逃げ出した。
魔法刑事たちの事件簿R(リターンズ)
アンジェロ岩井
SF
魔法という概念が、一般的に使われるようになって何年が経過したのだろうか。
まず、魔法という概念が発見されたのは、西暦2199年の十二月一日の事だった。たまたま、古よりの魔術の本を解読していたヤン・ウィルソンが、ふと本に書いてある本に載っている魔法をつぶやいてみたところ、何と目の前の自分の机が燃え始めのだ。
慌てて火を消すうちにウィルソンは近くに載っていた火消しの魔法を唱えると、その炎は消化器を吹きかけられた時のように消したんだのだ。
ウィルソンはすぐに魔法の事を学会に発表し、魔法は現実のものだという事を発表したのだった。
ただに魔法の解読が進められ、様々な魔法を人は体に秘めている事が発見された。
その後の論文では、人は誰しも必ず空を飛ぶ魔法は使え、あとはその人個人の魔法を使えるのだと。
だが、稀に三つも四つも使える特異な魔法を使える人も出るらしい。
魔法を人の体から取り出す魔法検出器(マジック・ディセイター)が開発され、その後は誰しも魔法を使えるようになった。
だが、いつの世にも悪人は出る。例え法律が完全に施行された後でも……。
西暦2332年の日本共和国。
その首都のビッグ・トーキョーの一角に存在する白籠市。
この街は今や、修羅の混じる『魑魅魍魎の都市』と化していた。
その理由は世界有数の警備会社トマホーク・コープと東海林会の癒着が原因であった。
警察や他の行政組織とも手を組んでおり、街の人々は不安と恐怖に苛まれ、暮らしていた。
そんな彼らの不安を拭い去るべく、彼らに立ち向かったのは4人の勇気ある警官たちであった。
彼らはかつてこの白籠市が一つのヤクザ組織に支配されていた時に街を救った警官たちであり、その彼らの活躍を街の人々は忘れてはいなかった。
ここに始まるのは新たな『魔法刑事たち』の『物語』
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる