愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット探偵、アリシアの路地裏探検記

千堂アリシア、調子に乗りすぎる

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こうして、<牛だるま>にてナニーニの情報を手に入れたアリシアとコデットではあったものの、<足取り>という意味では新しい情報は手に入れられなかった。

「申し訳ありません。こちらも現状ではこれ以上の情報は持っておりません」

ということだったのだ。

それでも、コデットは気にしている様子もない。

「じゃあ、次はこっちだ!」

ためらうことなく駆け出す。そしてまた家々の隙間へと。

『あひ~っ!』

再びの難行に、アリシアは思わず悲鳴を上げそうになりつつも、コデットの後に続く。

それでもさすがに慣れてきて、通り抜けられない時には、ひらりと宙を舞い、躱してみせた。

「探偵さん、すごい!」

気配を察したのか、振り返ったコデットが声を上げる。

無理もない。僅か五十センチもない隙間を、まるで体操選手のように頭を下にして宙を舞い、ぶれることなく着地。実に美しい姿だったのだから。

しかしその時、

「あ…っ!?」

アリシアの聴覚センサーが捉える、「ビッ!」というかすかな音と、感触。

そして、着地した彼女は、スーツのボトムのお尻の辺りを両手で押さえた。

さすがにロボットなので顔色は変わらないものの、表情が明らかに焦っているものに。

「探偵さん、もしかしてズボンのお尻、破けた?」

決して大きな音ではなかったものの、それでも特徴的なその音は、コデットの耳にも捉えられていたようだ。そして、アリシアの仕草と表情。もうこれだけで、さとい彼女には察せられてしまった。

アリシアのスーツのボトムの股間部分の縫製が、彼女の動きに対応できずに裂けてしまったことを。

無理もない。普通の人間の動きならまず問題ないレベルの伸縮性も備えたパンツスーツだったものの、さすがに体操選手の演技レベルの動きを前提には作られていないわけで、ここまでいくと破綻して当然だ。

さすがにアリシアが調子に乗りすぎてしまったのである。

ロボットであるアリシアは、当然、人間のように<下着>は着けていない。着ける必要がない。ボディそのものに<ボディスーツ>のようなデザインが施されているだけであって、人間の肉体と同じものがあるわけではないからだ。

なので、恥ずかしがる必要すらないものの、彼女の場合は、そうもいかなかった。

『うう……これはさすがに……』

などと考えてしまう。

するとコデットが、

「そこに服屋さんがあるよ」

と、指を差しながら示してくれた。

「!? それは助かります!」

『地獄に仏とはこのことですね……!』

そんなことを思いつつ視線を向けたその先にあったのは、今では珍しくなったいかにもな<個人経営の服飾店>という風情の店なのであった。

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