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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記
追うべき背中
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『改めて覚悟を決めてください』
アリシアにそう言われ、ナニーニは、自分がただの<憧れ>で剣士を目指していたことを思い知らされていた。はっきり言ってまともな<覚悟>などしていなかったことを突きつけられてしまった。
「はい……」
青褪めた表情で、ナニーニは力なく応えた。
けれど、そんな彼女に、
「このくらいでへこたれててどーすんだ。剣士ってのはこのくらいでへこたれててなれるようなチョロいもんなのかよ。お前はそんなチョロいもんに憧れてたのかよ」
コデットが辛辣な言葉を掛ける。
「……」
ナニーニは何も言い返さなかった。言い返すことなく、ただ唇を噛み締め、それと同時に、キッと前を向いた。前を向いて、アリシアの背中を見た。
自分が追うべき背中を。
およそ追いつけるとは思えないけれど、追いつけると考えることすらおこがましい気がしてしまうけれど、それでも追いかけたいと思った。
こうやって荷物を持って夜の街を駆け抜けることさえ、そのための修練だと思えた。
そうだ。落ち込んでる暇なんてない。剣士になることを憧れたのはただの子供っぽい思い付きだったかもしれないけれど、この<師>に出逢えたことはきっと<運命>だ。だからただこの背中を追いかけたい。
ナニーニの心に、太くて強い<芯>が生まれた瞬間であった。
そうしてナニーニが剣士としての自覚を改めて芽生えさせている間にも、三人は定期馬車の停留所へとたどり着いた。
普通なら街を出るかもしれないとして先回りして待ち構えていたりするところかもしれないが、ラウルが倒されたことで混乱し、対応が遅れているのだろう。
だから特に問題もなく、ボーマの街を離れることができた。
ただ、これからが大変なのである。
ラウルが倒されたことを知った<ゴクソツ>は、それこそ血眼になってアリシア達を追いかけてくる。
後ろ盾となっている<伯爵>は、言ってしまえばただ権力を嵩にきて調子に乗っているだけの小物なのでそれほど気にしなくても大丈夫なものの、<ゴクソツ>そのものは、もうすでに他の街にも勢力を伸ばしている大きな組織になっているので、この後も、事あるごとに絡んでくることになる。
とは言え、有数の実力者であるラウルも倒せたアリシア達にとっては、ある種の<賑やかし>と言うか、ナニーニのための<経験値稼ぎ>でしかなくなるのだが。
それよりは、今後、別の意味で厄介なものを相手にすることになる。
<ジュゼ=ファート>を追っていることを本人に悟られてしまい。彼を崇拝する者達までアリシア達を狙い始めるのだ。
今の世を大きく変えてくれる(予定)の<ジュゼ=ファート>の邪魔をする者を排除することに躍起になり始めるのである。
アリシアにそう言われ、ナニーニは、自分がただの<憧れ>で剣士を目指していたことを思い知らされていた。はっきり言ってまともな<覚悟>などしていなかったことを突きつけられてしまった。
「はい……」
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けれど、そんな彼女に、
「このくらいでへこたれててどーすんだ。剣士ってのはこのくらいでへこたれててなれるようなチョロいもんなのかよ。お前はそんなチョロいもんに憧れてたのかよ」
コデットが辛辣な言葉を掛ける。
「……」
ナニーニは何も言い返さなかった。言い返すことなく、ただ唇を噛み締め、それと同時に、キッと前を向いた。前を向いて、アリシアの背中を見た。
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およそ追いつけるとは思えないけれど、追いつけると考えることすらおこがましい気がしてしまうけれど、それでも追いかけたいと思った。
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そうだ。落ち込んでる暇なんてない。剣士になることを憧れたのはただの子供っぽい思い付きだったかもしれないけれど、この<師>に出逢えたことはきっと<運命>だ。だからただこの背中を追いかけたい。
ナニーニの心に、太くて強い<芯>が生まれた瞬間であった。
そうしてナニーニが剣士としての自覚を改めて芽生えさせている間にも、三人は定期馬車の停留所へとたどり着いた。
普通なら街を出るかもしれないとして先回りして待ち構えていたりするところかもしれないが、ラウルが倒されたことで混乱し、対応が遅れているのだろう。
だから特に問題もなく、ボーマの街を離れることができた。
ただ、これからが大変なのである。
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とは言え、有数の実力者であるラウルも倒せたアリシア達にとっては、ある種の<賑やかし>と言うか、ナニーニのための<経験値稼ぎ>でしかなくなるのだが。
それよりは、今後、別の意味で厄介なものを相手にすることになる。
<ジュゼ=ファート>を追っていることを本人に悟られてしまい。彼を崇拝する者達までアリシア達を狙い始めるのだ。
今の世を大きく変えてくれる(予定)の<ジュゼ=ファート>の邪魔をする者を排除することに躍起になり始めるのである。
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