愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記

無事

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「ご無事で何よりです! アリシア様!」

泣きそうな、しかし安堵した表情で自分を出迎えてくれたナニーニに向かい

「ありがとう。二人も無事でよかった」

笑顔を返した。

最初に宿泊していた宿が襲撃されるであろうことは予測できていたためにコデットに対処を依頼。見事にそれをこなしてくれたことで難を逃れたということだ。

正直なところ、ナニーニ一人では命を落とし、ゲームオーバーになっていた可能性が高い。

本来なら、地道な経験値稼ぎやレベルアップを行っているところなので、こうやって別行動することもない。基本的には二人を伴ってイベントをこなしていくからだ。

途中、別行動をすることになる<強制イベント>もあるものの、それをクリアするためにもナニーニとコデットのレベル上げも必要なのである。

もしくは、そのイベントのクリアを容易にする<仲間>を得るか。

しかしアリシアは極力、最短距離でのクリアを目指しているため、こういうことも起こる。

とは言え、コデットからの信頼を得ていたおかげで事なきを得たのも事実。

だからコデットにも、

「ありがとう」

と微笑みかけた。とは言え、

「別に……このくらいどうってことねーよ……」

当のコデットは相変わらず素っ気ないが。

けれど、アリシアは気にしない。まともな人間関係の中で生きてこられなかった彼女にとってそれが精一杯なことは承知している。

加えて、彼女のような境遇に育った者が、突然<いい子>になる方がむしろ不自然だろう。何か<狙い>があると考えた方がいい。

だからこれでよかった。ゆっくり、数年を掛けて周囲の手本となる大人から学んでいけばいい。

ただ、今は、

「でも、ごめんなさい。寛いでる時間はなくて。今夜の最終便の馬車があるうちに出発しましょう」

ラウルまで倒してしまったのでゴクソツとしても混乱してしまってすぐには動けないだろうが、こちらの宿を嗅ぎ付けられる時間の問題だろう。

しかし今なら、明日の早朝に次の街に着けるようにと夜のうちに出発する便があるので、それに飛び乗れば取り敢えず追撃はかわせるだろう。

「ああ、準備はできてる」

アリシアの唐突な申し出にもコデットは慌てない。先にアリシアから聞かされていたというのもあるが、彼女自身がこの種の荒事に詳しいからだ。

そうと決まれば躊躇はしない。

コデットがまとめてくれていた荷物を持って宿を出る。

戸惑うナニーニの背中をアリシアがそっと撫でながら言ったのだった。

「怖いですか? でも、これが、『剣の道に生きる』ということなんです。戦いの中では安らぎを得るのは難しくなる。改めて覚悟を決めてください」

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