愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記

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<サイコパス気質>というものが犯罪の原因のように言われることがある。

しかし、それは必ずしも正しくない。それだけが人間を犯罪に走らせるわけではない。要因としては決して小さくはないものの、それがすべてを決定付けるわけではないのだ。

実際、社会的に大きなことを成し遂げる者には、少なくない割合で<サイコパス気質>が見られることが分かっている。

これは、<サイコパス気質>であることが、他人の意見や価値観や常識に囚われずに自身の目的に邁進できる要因になっているからなのだろう。

人類史に残る、いわゆる<英雄>も、実はその多くが<サイコパス気質>の持ち主であったとも見られているのだ。

ゆえに現在の火星では、それだけで<要注意人物><危険人物>と見做されることはない。

実を言うと、アリシアの主人である千堂京一せんどうけいいちも、少なからず<サイコパス気質>の持ち主であるという診断結果が出ている。自身の傾向を知り、それによって適切な対処を行うために調べられる。

ゴーディンも、様々な犯罪者などのデータを基に設計され、強い犯罪傾向を持たせた人間として作られている。

しかしそれでもなお、<人間の範疇>を出る者ではなかった。だから戦闘ではアリシアには決して敵わない。

当然のことである。

だから怯えた目でアリシアを見ていても、何も不思議ではなかった。

が、その時、

「不様だな。ゴーディン」

冷淡な声が、届いてくる。

「っ!?」

慌てて振り返った彼の視線の先には、これまた冷淡なかおをした、浅黒い肌をした、長身痩躯、赤みがかった瞳、短髪、そしてそれ自体が何らかの意味を持つと思しき<礼装>を纏った年齢不肖な男が立っていた。

「ラウル……」

ゴーディンが呟くように口にしたのが、その男の名だった。

「ゴクソツの幹部の一人、<戦術師>ラウル・ディルティクス……なるほど、そこまでスキップできましたか……」

アリシアもそう呟くと、<ラウル・ディルティクス>と呼ばれたその男が、訝しげに、

「俺の名を知っている……? 誰だ、お前は……?」

もはやゴーディンのことなど意識の外とでもいうかのように無視して、赤い瞳でアリシアを睨み付けた。

確かに。この時点では本来、プレイヤーはラウルについての情報はまだ得ていないはずだった。アリシアはいわゆる<ネタバレ>的にあらかじめ情報を得ていたので、知っていただけである。ラウルに至るまでには三人の<小ボス><中ボス>をクリアして辿り着くのが本来の流れだった。

アリシアはそこまでスキップさせたということなのだ。

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